景気後退のシグナル「米長短金利差逆転」の現実味=藤代宏一
米長短金利差縮小と景気後退の足音=藤代宏一
1月に入り、世界の株価は大幅に下落した。投資家が米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めと、それに伴う金利上昇を警戒しているのは明白だが、それと並行して世界経済の風向きが悪くなっていることにも注意が必要だろう。
1月のグローバル製造業PMI(購買担当者景気指数)は53・2と依然高水準を維持しているとはいえ、下向きのカーブを描いている。
また、投資家の注目度の高い米供給管理協会(ISM)の米製造業景況指数は57・6へと低下した。
過去数カ月の景況指数低下の背景には、世界的なサプライチェーンの混乱による自動車生産の抑制があり、こうした一過性要因によって弱さが誇張された可能性は否定できない。その一方で、新型コロナウイルス禍における財需要増加がピークアウトした可能性もある。
過去、製造業の景気サイクルが2年程度の波を描いてきたことを踏まえれば、循環的な時機の悪さを意識せざるを得ない。
こうした生産サイクルの下向き基調に沿って、米国では景気の先行きを反映する2年債と10年債の金利差(長短金利差)が縮小傾向にある。
2年金利がFRBの利上げ観測を反映し1%を超えて上昇している一方、10年金利は将来の景気後退懸念などから鈍い上昇にとどまっており、金利差は拡大しにくい状況にある。
2022年にFRBが4回超の利上げを実施し、その間、23年以降の利上げ…
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週刊エコノミスト
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