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開会式後にすぐ帰国したプーチン氏 ロシア側を怒らせた理由は=金子秀敏

すぐに帰国したプーチン氏 見返り少ない「五輪外交」=金子秀敏

 中国の習近平国家主席は2月4日、ロシアのプーチン大統領と北京で首脳会談を行い、その後、北京五輪開会式に臨んだ。北京冬季五輪の幕開けを中露首脳会談で飾り、秋の中国共産党第20回大会での総書記3選にはずみをつけようという狙いだ。

 習主席は昨年11月、「習近平新時代」の到来を意味する「第3の歴史決議」を採択させたものの、党内の反発は強く、党内世論は分裂状態に陥った。加えて、米中対立による西側諸国との関係悪化や新型コロナウイルス抑制で採用した「ゼロコロナ」政策にも不満が高まっている。

 もともと、昨年7月の「共産党建党100周年」の軍事パレード、北京冬季五輪、党大会という三段跳びのイベントで習政権に対する求心力を維持しようという計画だった。ところが、建党100周年直後には河南などで大洪水、さらに新型コロナ禍の拡大でイベント効果は落ちていた。

 この流れを変えるための起死回生策が中露首脳会談だった。ウクライナを巡ってロシアと欧米との軍事的緊張がピークに近づいている時だったが、プーチン大統領は北京に飛んできた。

 米国が、新疆ウイグル自治区の人権問題や香港の民主派弾圧などを理由に北京冬季五輪の「外交ボイコット」を呼びかけ、西側諸国の多くがボイコットと明言しないまでも事実上、首脳派遣を控えていた。北京冬季五輪に出席した元首、王族、政府首脳は、国連事務総長など国際機関代表を含めて24人いたが、大国からはプーチン大統領だけだった。

 空港から釣魚台迎賓館に直行したプーチン大統領は、習主席とマスクなしの対面会談をして友好関係を印象付け、ウクライナ問題と台湾問題で互いに相手の立場を支持する共同声明を出した。石油、天然ガスの長期供給など多くの協力…

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週刊エコノミスト

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