中国政府が農地管理や戸籍制度の改革を目指す理由は何か=神宮健
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農地管理や戸籍制度を改革 生産要素の有効活用目指す=神宮健
中国政府は2022年に入って、生産要素の市場化配置(市場メカニズムによる配分)改革試行の案(以下、試行案)を発表した。
試行地域には、改革が必要で発展の潜在力が大きい都市(圏)が今後選ばれ、試行期間は22年から25年である。25年には、全国で実行可能な方法について知見を得る。
一国の国内総生産(GDP)は消費、固定資産投資、純輸出という需要面と、生産要素(労働力、資本、土地等)の投入・利用という供給面から見ることができる。10年代後半から、供給面の改革を通して経済発展モデルの転換を図る「供給側(サプライサイド)構造改革」が進められている。さまざまな制度的な問題により、生産要素が効率よく利用されていないという現状認識の下で、生産要素の配分において市場メカニズムを大きく働かせようとする今回の改革試行もその流れの中にある。
試行案では、土地、労働力、資本、技術、データ、資源の順で生産要素が取り上げられている。ここでは、中国の生産要素の配分・利用をゆがめている制度としてまず頭に浮かぶ、土地管理制度と農村と都市間の人の移動を難しくする戸籍制度について見る。
土地管理については、耕地面積の確保を前提に、農村や都市の建設用地の有効利用が示されている。その中で、都市と農村の建設用地の統一的市場の構築がある。これは、農村が集団で所有する建設用土地(使用権)の市場での譲渡を可能にするもので、地方政府による土地の独占供給体制を打破する点で意義がある。
従来、農村の土地は、地方政府が農民から収用した上で不動産業者に土地(使用権)を有償譲渡して開発させてきた。これが、不動産バブルの遠因となり、また、収用する際の補償額が低かったことで貧富の格差…
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週刊エコノミスト
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