経済・企業

TSMC熊本工場にデンソーも出資、車載用ロジックデバイス製造の「深謀」=服部毅

熊本工場の計画をすべて上方修正したが…… Bloomberg
熊本工場の計画をすべて上方修正したが…… Bloomberg

TSMC 熊本工場にデンソーも出資 車載デバイス生産の「深謀」=服部毅

 デンソーは2月15日、世界最大の半導体ファウンドリー(製造受託業)である台湾TSMCとソニーグループが熊本県に作る新工場に出資すると発表した。ソニーの出資570億円に対してデンソーの出資は400億円で、デンソーは工場運営の新会社の1割超の株式を取得する。熊本工場の生産品目は、ソニー向けイメージセンサーだけでなく、車載ロジックデバイスも加わることになった。

 TSMCはこれに伴い、使用する製造プロセスを従来の20ナノメートル(ナノは10億分の1)台から微細な10ナノ台まで広げ、生産能力も月産1万枚(300ミリメートルウエハー換算)増やして5万5000枚とする。このため、TSMCは当初予定の投資額を1800億円ほど積み増して約9800億円とし、従業員数も200人増やして1700人にするなど、すべての初期計画を上方修正した。

甘利氏の思惑通り?

 政府は昨年末の臨時国会で、外資企業の国内生産に助成金を交付できるよう法律を改正した。TSMCは熊本工場への総額1兆円規模の投資のうち、半額の5000億円程度の補助金を手にすることになる。経済産業省は、外資企業に多額の補助金を支給することは国民の理解を得られにくいとして、何とか日本企業との合弁にして形を整えようと、ルネサスエレクトロニクスをはじめ主要半導体メーカーに声を掛けてきた。

 しかし、誘いに乗ってきたのはソニーのみだった。ただ、ソニーのイメージセンサー向けの半導体は先端プロセスを必要としない。ここでデンソーを呼び込んで国産自動車向け半導体も製造することにすれば、経済安全保障や半導体の安定供給の点でも説得力が増し、税金投入の正当性に関して国民の理解が得られやすいという思惑が働いたのだろう。

 自民党半導体戦略推進議員連盟(半導体議連)会長の甘利明衆院議員は、昨年12月に東京で開催された半導体装置・材料業界の展示会「セミコン・ジャパン」の基調講演で、「10年前の20ナノ台の技術を日本に持ってきて、そこに政府資金を投入しても意味がない。TSMCを10ナノ台へ引き込むことが今後の課題だ」と述べていた。今回のデンソー出資は甘利氏の思惑通りの展開になっている。

 しかし、熊本工場はあくまでTSMCが大半を出資して経営の主導権を握る形であり、台湾は最先端技術の海外持ち出しを警戒するなど、日本での将来の最先端半導体の生産計画にはいくつもハードルがある。

 日の丸半導体の復興への道筋はまだ描き切れていない。

(服部毅・服部コンサルティング・インターナショナル代表)

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