週刊エコノミスト Online 洋上風力 価格破壊
《オンライン先行特集》「低価格を実現できた理由をすべて話そう」 三菱商事エナジー社長が本音を語る
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秋田県沖2か所と千葉県沖の3海域で入札された大型洋上風力発電事業の入札で、上限価格29円の半値から3分の1という衝撃的な価格で3件すべてを落札した三菱商事。応札した企業や、設備、工事などを請け負う事業者からは、「どうすればあの価格を実現できるのか」「赤字覚悟の受注ではないのか」といった声が上がっている。三菱商事の国内再生可能エネルギー子会社で、今回の入札で三菱商事とコンソーシアム(企業連合)を組んだ三菱商事エナジーソリューションズの岩崎芳博社長に価格を低減できた理由を聞いた。(聞き手=金山隆一・編集部)>>>「洋上風力 価格破壊」特集はこちら
――秋田と千葉の3海域の洋上風力発電の入札でなぜ上限FIT(固定価格買取制度)価格の半値以下の価格を実現できたのか。欧州での実績はあるが、日本には洋上風力は産業として育っておらず欧州並みのサプライチェーン(部品などの供給網)がまだ構築されていない、という声が多い。
岩崎 三菱商事には欧州で10年来洋上風力をゼロから開発してきた人間が社内に多数いる。私自身もドイツの海底送電事業の立ち上げをやってきた。経験を持つ人材を今回のプロジェクトの担当にして、入札に向けて、風車メーカーなど機器のサプライヤー、海洋土木、陸上の送変電などそれぞれの専門家の推薦や提案を鵜呑みにせず、議論しながら、主体的に判断してリスクを極小化し、価格を積み上げていった。それが実際にやったことだ。
身内に欧州企業がいる強み
――海外で洋上風力の経験ある企業でも、あの値段は出せないという意見があるが。
岩崎 今回結果を見ると、他のコンソーシアムは欧州のデベロッパーと組んでいるが、我々の中にはいない。シーテック(中部電力の再エネ子会社)とウェンティ・ジャパン(秋田・再エネディベロッパー)のメンバーだけで入札に挑んだ。
三菱商事は2020年3月にオランダの再生エネルギー会社のエネコをグループに迎え入れた(三菱商事4000億円、中部電力1000億円を出資して買収)。エネコは、当社が欧州で2010年代に7プロジェクト、合計出力350万㌔㍗の洋上風力を開発したときのパートナーだったが、今は三菱商事の子会社となり、当社の兄弟会社になった。エネコとは入札中から毎日のようにオンラインで議論し、直近の欧州の知見、技術、規制などを共有している。
推測だが、今回の入札で海外のデベロッパーと組んで…
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