物価上昇でますます貧する「賃金を上げられない」日本=斎藤太郎
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インフレ下で求められる賃金ベア=斎藤太郎
名目賃金が低い伸びにとどまる中で、消費者物価が上昇に転じたため、実質賃金上昇率はマイナスとなっている。
2022年の春闘賃上げ率は21年の1・86%(厚生労働省の「民間主要企業賃上げ要求・妥結状況」)から2%程度まで上昇することが予想されるが、定期昇給を除いたベースアップで見れば0・2%程度にとどまる。22年度の消費者物価上昇率は、エネルギー、食料の高い伸びを主因として1%台後半まで加速することが見込まれるため、実質賃金の低下幅はさらに拡大する可能性が高い。
新型コロナウイルスの影響で、景気は急速に悪化し、その後の持ち直しも緩やかにとどまっている。その一方で、有効求人倍率が1倍を上回り、企業収益がコロナ前の水準を回復するなど、労働需給や企業収益といった賃上げに影響を及ぼす指標は経済全体に比べるとそれほど悪化していない。
アベノミクス景気が始まって以降、賃上げを巡る環境が良好だったにもかかわらず、賃金上昇が本格化しなかった一因は、組合側の要求水準が上がらなかったことだ。連合傘下組合の賃上げ要求と実績の関係を長期的に見ると、1990年代後半までは4%以上の賃上げ要求に対し、実際の賃上げ率は3%前後となっていた。その後は雇用情勢が厳しさを増し、組合が賃上げよりも雇用の確保を優先したこともあり、ベースアップなしの1%台後半の要求という期間が長く続い…
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週刊エコノミスト
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