ロシア発ガス危機で進む脱炭素社会 水素・アンモニア・CO2処分で巨大な経済圏形成=編集部
有料記事
新エネやCO2処分 巨大な脱炭素経済圏=種市房子
<ウクライナ危機で注目! グリーン素材&技術>
ロシアのウクライナ侵攻による天然ガス危機が、二酸化炭素(CO2)の排出が少ない社会を目指す「脱炭素」を加速させる一因になりそうだ。
国際エネルギー機関(IEA)は3月3日、天然ガス危機に直面した欧州に対する10の提言を発表した。欧州連合(EU)域内では2021年にロシアから155立方キロメートルの天然ガスを輸入したが、この提言に沿った行動を取れば50立方キロメートル以上の輸入を削減できるという。
露危機で脱炭素加速
提言には、例えば、(1)調達先をロシア以外に切り替える(削減効果30立方キロメートル)、(2)家庭での設定温度を1度下げる(同10立方キロメートル)など短期的・現実的な対策が並ぶ。加えて、(3)太陽光と風力発電事業の促進(同6立方キロメートル)、(4)バイオ由来燃料や原子力発電の活用(同13立方キロメートル)、(5)発電システムの多様化や脱炭素化(定量分析なし)──といった長期的な脱炭素策も含まれている。これらの脱炭素関連提言の多くに、IEAが21年5月に発表した報告書「Roadmap to Net Zero by 2050」に盛り込まれた要素がかかわる。
報告書では、水素発電とCO2の回収・処分が、特にインパクトの大きい技術革新と指摘する。
水素は燃焼時にCO2を排出しない次世代燃料だ。欧州ではウクライナ侵攻前から、水を再生可能エネルギーで電気分解して製造する「グリーン水素」の製造拠点を整備し、パイプラインで流通させる構想が進んでいた(76ページ)。ウクライナ侵攻を受けて、欧州での脱天然ガス・水素導入の動きが加速しそうだ。
日本企業も水素の製造・運搬・貯蔵、利用に乗り出している(図)。ただし、日本では再エネの供給量が少ない。短期的には、化石燃料に含まれる炭化水素を水…
残り918文字(全文1718文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める