ロシア軍の侵略が習近平政権にも打撃となった理由=金子秀敏
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露軍の侵略が習政権に打撃 プーチン氏とともに威信低下=金子秀敏
ロシアのプーチン大統領が北京冬季五輪直後の2月24日、ウクライナを侵攻した。ロシアも欧米諸国も戦闘は数日で終わると予想したが、ウクライナ軍の激しい抵抗で戦況が膠着(こうちゃく)状態に入ると、ロシアの侵略行動に国際的な批判が高まり、プーチン氏の国際的威信は一気に失墜した。
プーチン氏の大誤算は、プーチン氏との盟友関係を誇示してきた習近平・中国国家主席にも大きな打撃となった。
習氏は今年秋の共産党第20回大会で総書記3選を目指している。だが、ロシアに対する国際的な経済制裁の実施が確実になった結果、親プーチンの習政権では中国が制裁に巻き込まれる恐れが高まり、3選反対の空気がにわかに広がった。米メディアは、朱鎔基元首相ら長老が反対の態度を表明したとの党内情報を報じている。
プーチン氏はウクライナ侵攻を目前にした2月4日、北京冬季五輪の開会式出席に合わせて中国を訪問し、習氏と首脳会談し「上限のない」異例の協力関係を確認した。石油・天然ガスの長期供給などの契約を結んだほか、金融協力の項目があり、ロシアに対する経済制裁の抜け道ではないかという臆測がある。
米国は、この時に習氏がプーチン氏から侵攻計画を知らされた上で「上限のない」協力に合意していたと見て、中国も制裁の対象としたい意向といわれる。
バイデン政権がウクライナへの派兵を否定しているのは、ロシアとの軍事的な対抗を避け、背後の中国を経済制裁で締め付けた方が効果的と見ているからだ。
習氏も本音では党大会で権力を確立する前に、ロシアに軍事行動を起こしてほしくなく、プーチン氏との会談では賛成とは言わず黙認の形だったらしい。しかしロシア軍が短期で勝つと信じ、制止はしなかったようだ…
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週刊エコノミスト
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