利下げ、指導、業界再編……政策から見えてきた中国不動産市場の今後=神宮健
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利下げや指導で業界下支え 見えてきた不動産市場の今後=神宮健
2022年の中国の不動産市場は金融面から下支えされている。金融政策を見ると、中国人民銀行(中央銀行)は今年1月、政策金利に相当するMLF(中期貸出制度)金利を0・1%引き下げた。これを受けて、銀行の貸出金利も低下し、住宅ローン金利も都市により異なるが、今年に入って0・3%程度低下している(各種報道による3月末時点)。
不動産市場の対策を見ると、まず、人民銀行などは21年10月以降、各地の銀行に個人向け貸し出しや不動産関連貸し出しを増やすように、何度か窓口指導を行ったと報道されている。不動産開発投資の資金源(21年)を見ると、住宅販売(含む完成前販売)に関連する資金の回収(保証金、前受け金、住宅ローン)が半分強、金融機関貸し出しが1割強を占めている。当局には、特に個人向け住宅ローンを増やし住宅販売を後押しすることで、不動産開発業者の資金繰りを改善させる意図があろう。
ただし、新規の住宅ローンは昨年10、11月にやや加速したが、今年2月に、主に住宅ローンである個人向け中長期貸し出しが前年同月比で減少に転じている。新型コロナウイルス禍もあり当面、住宅需要の動向には注意を要する。
次に今年1月、不動産会社の有利子負債の増加を抑制するために20年に導入された比率規制、「3本のレッドライン」が、優良不動産プロジェクトに関連するM&A(合併・買収)用の貸し出しには適用されないことも明らかになった。
これにより、健全な不動産会社は経営難に陥った不動産会社の持つ不動産プロジェクトを買収するための資金を得やすくなる。今年1月には、上海浦東発展銀行や広発銀行が不動産M&A貸し出しの資金調達のための債券をそれぞれ50億元(約960億円)発…
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週刊エコノミスト
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