「インフレはコントロールできる」 人々がそう信じている間はインフレは怖くない=渡辺浩志
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市場がFRBに期待する「インフレ制御の力量」=渡辺浩志
好調な景気(需要)と新型コロナウイルス禍による供給制約が重なり、米国のインフレ率(コアPCEデフレーター前年比)は、連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%をはるかに上回る、5%台にある。
3月の連邦公開市場委員会は、0・25%の利上げに踏み切った。年内に計7回、来年は3・5回の利上げを予想(各回0・25%)。最終的な政策金利水準を、中立金利(景気を熱しも冷やしもしない政策金利水準)を上回る2・75%まで引き上げる見通しを示した(図1)。景気を悪化させかねない水準まで利上げを行うとの見通しは、市場の想定を超えるものだった。
FRBがこのようなタカ派姿勢を示した背景には、現下の高インフレへの警戒があるが、加えて「物価の番人」としての信認を維持する狙いがあったと思われる。
インフレ予想は安定
FRBへの信認の度合いを表すのは、人々の長期のインフレ予想(5年先スタート5年物のインフレスワップ)の動きだ。図2の通り、いまは現実のインフレ率が急上昇しているのに対して、インフレ予想は2%近辺で安定している。これは現下の高インフレをFRBが制御できると人々が信じていることの証しといえる。
だが、コロナ禍による供給網の混乱は長引いている。足元ではウクライナ危機に伴う供給制約により、原油・穀物・産業用金属などの商品市況が高騰している。これらによる先々のインフレはFRBの手に負えないものになると人々が考えるようになれば、インフレ予想が暴走し、駆け込み消費や便乗値上げが殺到して、歯止めの利かないインフレを招いてしまう。
そのような恐れが少しでもあれば、FRBは、たとえ相手が金融政策では対処できないコストプッシュ型インフレであろうとも、戦う姿…
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週刊エコノミスト
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