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FRBのタカ派姿勢の影響は「長短金利スプレッド」だけでは判断できない=愛宕伸康

「長短金利差」では利上げの影響を判断できない=愛宕伸康

 3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0・25%の利上げに踏み切った連邦準備制度理事会(FRB)だが、早速利上げ幅の拡大を考えているようだ。

 パウエル議長は3月21日の講演で「(政策金利の)フェデラルファンド(FF)金利を0・25%以上引き上げる積極的な行動が適切と判断した場合は、そうするだろう」と言明した。事前に市場に織り込ませるのがFRBのコミュニケーション・スタイルであるとすれば、5月の次回FOMCで利上げ幅が0・5%になる可能性が高い。

 FRBのタカ派姿勢を受けて気になるのが景気のオーバーキル(失速)だ。市場の懸念は長短金利スプレッド(差)の縮小(イールドカーブの平たん化)で確認できる。だが最近、その見方が難しくなっている。というのも10年債金利と2年債金利のスプレッドと、10年債金利とFF金利のスプレッドが逆方向の動きを示しているのだ(図1)。FRB高官の利上げ発言が活発化した昨年11月以降、2年債金利が利上げを織り込んで急上昇したのに対し、実際はまだ利上げが行われておらず、FF金利が横ばいで推移したためである。

 仮に10年債金利が足元の2・5%で横ばい、FF金利が今年5月に0・5%、その後0・25%ずつ引き上げられたとすれば、2023年1月に両者は交差する(逆イールド)。経験則からその後1年か1年半で景気後退になるとすれば、24年が怪しいということになる。否、2年債金利はすでに大きく上昇しており、その意味で金融引き締め効果は出始めているのだから、景気後退はもっと早く来るとの意見もあろう。

 10年11月の量的緩和(QE2)以降、FRBによる大量の国債購入が長期金利を押し下げており、過去の経験則に直接当てはめて…

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週刊エコノミスト

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