教養・歴史書評

長い伝統を持つ儒教も、いまだ「宿題」を抱える未完成の倫理思想=加藤 徹

倫理思想の完成形にあらず いまだ「宿題」抱える儒教=加藤徹

 紀元前6世紀の孔子に始まる儒教は、現代の日本人や中国人の生き方にも影響を与えている。水口拓寿著『中国倫理思想の考え方』(山川出版社、1980円)は、一味違う儒教思想史の解説書だ。著者は言う。倫理や思想、芸術、政治、医療・衛生など「およそ伝統的といわれるものは、その始まりの時点からすべての人に対して有益無害であったかのような、もしくは長い時間を経過する内に、深刻な問題点をすっかり清算できているかのような先入観を抱(いだ)かれがちである。だが、儒教の倫理思想はそうではないということ、少なくともまだそうなってはいないということを、皆さんには憶えておいていただきたい」。

 二千数百年の伝統をもつ儒教は、実は未完成だ。さまざまな「宿題」が積み残されたままだ。春秋戦国時代の乱世、社会は平和と秩序のための倫理思想を渇望した。その中で儒教が勝ち残り、漢王朝の「国教」となった。儒教はその後も、宋代の朱子学や明代の陽明学が新説を打ち出すなど、理論的発展を続けた。

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