江戸時代、世界トップレベルだった日本の科学者たちの業績を紹介=今谷 明
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医学、地理学、宇宙論… 江戸の科学者は世界水準=今谷明
「鎖国」の印象が強烈なためか、近代的な学問はすべて明治以降に成立したと思い込んでいる向きは多い。しかし江戸の学問(ことに理系)は18世紀以降、長足の進展を遂げていたので、歪曲(わいきょく)された史実も多い。
雑誌『東京人』において「江戸の理系は世界水準」なる特集が組まれたことがあった(2013年2月号)。評者もさっそく購入して興味深く読んだが、当時大学で「日本学芸史」を講じていたので、そのネタ本の意味でも有益であった。享保の改革の初期、京都の銀座役人中根元圭の建白(提言)によって将軍徳川吉宗が、キリスト教に無関係の洋書を解禁して以降、こと学術面では鎖国は終わっていたのである。
最も早く発展したのは医学で、杉田玄白らの『解体新書』翻訳のはるか以前、京都ではすでに人体解剖が行われ、全身麻酔による手術も、実は世界で最も早かった。次いで世界水準に達した分野は天文・地理学で、麻田剛立(あさだごうりゅう)らの天体観測が幕府の改暦事業に反映され、また間宮林蔵らの探検家伊能忠敬らの測量家を生み出して、地理学史上「文化(年間)の地理学」として特筆されている。1790年、幕府天文方(てん…
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週刊エコノミスト
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