中国大卒者1000万人時代に求められる中国政府の意識改革=岸田英明
大卒1000万人時代 希望の職に就けない若者
3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、李克強首相が重点政策の一つに挙げたのが若者の就業問題だ。中国の高等教育機関(大学、大学院など)の卒業・修了者は、今年初めて1000万人の大台に乗る。
大卒者1000万人時代は、少子化の影響で学生数急減が見込まれる2040年代前半ごろまで続く見通しだ。雇用圧力が強まる中、中国政府は彼ら・彼女らの就業や起業支援を強化している。だが社会を安定的に運営するには、「若者が将来に希望を持てる社会像」を示すことがより重要になるだろう。
中国教育部によると、22年の大卒者、大学院卒者は前年比167万人増の1076万人。23年には1200万人に迫る。00年(107万人)と比べると実に10倍以上だ。この変化は、労働力の質向上を目指して大学の定員を増やしてきた政策の成果で、「子供により良い就職、より良い暮らしを」との、とりわけ現在の学生世代に多い「一人っ子」の親たちの願いを受けたものでもある。
国連によると、20年の中国の高等教育機関への進学率は58・4%で、日本(18年に64・1%)に迫る。中国では、進学率を押し上げる都市化率や所得上昇が今後も続くことから、人口の高学歴化トレンドはさらに進むだろう。
一方で中国の高学歴の若者たちが皆「良い就職」ができているかといえば全てがそうではなく、問題は多い。最も大きな問題は、学生の希望と合う仕事の供給が不足する、雇用のミスマッチだ。
今の学生は親世代に経済力があるため、大学院に通ったり、留学したりするなどして、よく言えば仕事を「じっくり選ぶ」。悪く言えば「選り好み」する傾向が強い。国家公務員や国有企業のような安定した職場や、ファーウェイやテンセントのような高待遇の…
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週刊エコノミスト
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