市民虐殺で欧州の対露世論が硬化 武器供与と制裁強化の声一段と=熊谷徹
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ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャなどで、ロシア兵に射殺されたと見られる多数の市民の遺体が発見された。欧州連合(EU)では、ウクライナへの武器供与や、対露制裁強化の声が高まっている。
ウクライナ検察庁によると、ブチャなど、ロシア軍が一時占領した町で見つかった遺体は1200体を超えた。
独日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ』は4月4日付紙面で「ゼレンスキー大統領は、『これはジェノサイド(民族虐殺)だ』とロシア軍を非難するとともに、オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に対し調査を要求した」と伝えた。同紙は社説で「プーチン大統領はウクライナ人の殲滅(せんめつ)を目指している。彼を勝たせてはならない。ウクライナ人たちは欧州全体を守るためにも戦っているのだから、彼らが望む武器を供与するべきだ」と訴えた。
独日刊紙『ヴェルト』は、4月5日付電子版で「EUは残虐行為に抗議するために、対露制裁措置を初めてエネルギー輸入に拡大し、今年8月にロシアからの石炭の輸入停止に踏み切る」と報じた。輸入禁止措置の発動が4カ月後になったのは、ドイツ政府の要請のためだ。
しかもロシアが石炭の対EU輸出から得る収入は約80億ユーロ(1兆800億円)で、原油とガスの輸出からの収入(約1000億ユーロ)に比べるとはるかに少ない。このためウクライナは、EUに対し原油とガスの輸入停止を急ぐよう求めている。
独首相の及び腰に批判
欧米では「ドイツ政府は、米英に比べてウクライナへの武器供与に積極的ではない」という批判も強まっている。同国の日刊紙『南ドイツ新聞』は4月11日付電子版で「ドイツ政府のべーアボック外務大臣は『ブチャなどからの悲惨な映像は、ウクライナがロシア侵略軍と戦うために、重火器を必要として…
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週刊エコノミスト
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