露に賭けた中国の打算と誤算 リスク覚悟で「対米」優先=河津啓介
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ウクライナ危機への対応を巡り、中国が深刻な矛盾に直面している。
中国はロシアの行動を「侵攻」と認めず、国連などでも擁護を続ける。同時に、経済などで関係の深いウクライナに配慮して「主権と領土保全の尊重」の原則を主張している。
台湾問題にも関わるこの原則は、中国にとって極めて重要なはずだ。しかし、ロシアの明らかな違反行為に歯切れが悪い。
カーネギー国際平和財団のエバン・ファイゲンバーム副理事長は財団サイトの論考(2月24日)で「中国はロシアとの戦略的パートナーシップ、長年の外交原則、欧米の制裁回避という三つの間で不可能なバランスを取ろうとしている」と指摘した。
米国を意識した対露接近は、中国の習近平国家主席肝煎りの戦略だ。侵攻の20日前、習氏は北京にプーチン露大統領を招き、両国が東西で直面する米主導の包囲網に連携して対抗する共同声明を発表した。
米ジャーマン・マーシャル財団のアンドリュー・スモール上級研究員は財団サイトの論考(3月18日)で「ロシアを公然と支援する決断が、中国と習氏を戦争に直接結びつけた。欧州の指導者も中露を一体の脅威として語り始めた」と分析した。
中国はなぜリスクを冒してまでロシアに賭けたのか。習指導部は当初、漁夫の利を得られる機会と楽観していたようだ。中国の政治学者、鄭永年氏は所属先の公式アカウントに発表した論考(2月25日)で「プーチン氏の戦争で世界は驚がくし、米国がインド太平洋に戦略的重心を移す歩みが大きく遅れる」とし、「地政学のてんびんが中国へ(有利に)傾いている」と見ていた。
しかし、ウクライナが予想を超える抵抗を見せ、欧米が結束する「誤算」が生じた。米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は下院の公聴会(3月8日)で「習氏は少し不安を感じているようだ」…
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週刊エコノミスト
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