ストーリーは荒唐無稽。しかし安全保障情報に鋭敏な長編小説=孫崎 享
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日本の安保環境を擬装? 荒唐無稽すぎるスパイ小説
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外務省時代、時間があるとスパイ小説を読んだ。筋より本にちりばめてある背景の道具立てを見るためである。筆者が2009年に出版した『日米同盟の正体』では、好きなスパイ小説の順位を掲載した。(1)トム・クランシー『合衆国崩壊』、(2)ジョン・ル・カレ『寒い国から帰ってきたスパイ』、(3)フレデリック・フォーサイス『イコン』、(4)ダン・ブラウン『デセプション・ポイント』、(5)トム・クランシー『レッドオクトーバーを追え』。素晴らしいスパイ小説には、通常メディアで報道されない内幕がふんだんに盛り込まれている。
島田雅彦『パンとサーカス』(講談社、2750円)は評価の割れる本だと思う。主な登場人物は、東大法学部卒のCIA(米中央情報局)エージェント▽暴力団火箱組の後継者▽その後継者の異母妹で元ソープ嬢▽ホームレス詩人で元警察官。どう見ても現実性がない登場人物である。
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