経済・企業 シェア本屋
《シェアで書店主》Q&Aで理解 シェア型本屋の棚主になる
いざ棚主に踏み出そうとする時に浮かぶさまざまな疑問。シェア型本屋の運営者と、棚主に聞いた話をもとにまとめた。
(黒崎亜弓・ジャーナリスト)
話を聞いたのは、ブックマンションの中西功さん、PASSAGE by ALL REVIEWS(パサージュ・バイ・オール・レビューズ)の由井緑郎さん、BOOKSHOP TRAVELLER(ブックショップ・トラベラー)の和気正幸さんの運営者3人と各店の棚主たちだ。
Q1 棚主ってもうかる?
「もうけることを目的にしない方がいい」と、運営者は口をそろえる。本を売って棚代分をまかなうのはかなりハードルが高い。利益を上げている棚主もいないわけではないが、棚主だからできること、広がる世界があり、棚代は参加費だと思った方がいい。
Q2 どんな本を並べる?
不要な本を処分するなら古書の業者に委ねた方が早い。せっかく月額を払って自分の棚を持つのだから、手持ちの中から良いと思った本を並べたい。
「読み返すことはないから、誰かの手に渡ってほしい」と思えればいいが、「勧めたいほどの本は手元に置いておきたい」と悩む棚主は多い。そこで、「売りたくないけれど、見てほしい本」に相当高い値段をつけたり、同じ本を2冊入手する棚主もいる。新刊書店で買って定価で売れば手数料の分が持ち出しとなるが、届けたい気持ちが勝るのだ。
店によっては、閲覧・貸し出し用として棚に置くことができる。運営側が取次(卸)からの新刊仕入れを代行するシェア型本屋もある。
注意したいのは、販売目的で古物を買う場合、古物商許可証が必要となること。盗品売買を防ぐため、「古物を売買する営業」は古物営業法で規制されている。ただし、「自分が使うために買った古物の販売」は許可が要らないので、古書店やネット通販で買って読んだ古本を売ることは可能だ。
一般書籍のほか、自分が作った本や冊子も置ける。
Q3 どの本屋がいい?
表に東京都内4店の基本的な条件をまとめた。各地に増えている棚貸し(シェア型)本屋(74〜75ページ地図参照)は、区画に本を並べられる点は同じでも、店のコンセプトや運営スタイル、カラーはまちまちだ。
「大事なのは、実際に行ってみること」(中西さん)。土地柄やお店の雰囲気、他の棚主たちの様子を肌で感じ、相性をはかりたい。
なかには複数の本屋に棚を持ち、異なるテイストに合わせて本を選んでいる棚主もいる。
本を補充したり、店番に入ったりすることを考えると、足を運びやすい立地に越したことはない。一方、パサージュのように郵送での補充を受け付けるケースもある。
今後も各地でオープンが続きそうだが、近くにないと嘆くなら、「自分で立ち上げてはどうか」(和気さん)。
Q4 どうすれば売れる?
最初に悩むのが値付けだ。値段はたいてい棚主がスリップ(値札)に書いて本に挟んでおく。パサージュはウェブ登録のうえシールを印刷する。
古本としての相場観はネットで調べればつかめるが、「値段は関係ない面もある」(中西さん)。「愛のある売り方をしましょうと伝えている。個が立った棚は人気がある」(由井さん)。
棚自体にテーマを設けたり、月ごとにテーマを変えて選書するのもアリだ。黄色い本ばかりを並べた棚なんてものもある。棚のコンセプトを伝えるPOP(宣伝文句)や本につけたお勧めメッセージが棚主の声を届ける。店番に入れば、直接お客に伝えられる。
本の背表紙を並べるだけでなく、表紙が見えるように置いたりして棚にメリハリをつけると目にとまりやすい。「一般書店で、本の並べ方を工夫していることが分かるようになった」と棚主が言うように、自分でやってみて初めて、プロの技に気づける。
本の補充は「売れて棚が空いてきたら」と考えがちだが、「そこは逆で、仕掛けるから売れる」(和気さん)。自分の棚は、選書や並べ方を自由に試行錯誤できる空間だ。棚を充実させようと、本探しと読書に熱が入る副産物もある。