国際商品の上振れから予測する「消費者物価指数4%」の現実味=藻谷俊介
日本のインフレ率は最大でも4%=藻谷俊介
本誌4月5日号のこのコラムで、次のように記した。メインシナリオであった中国経済再加速による世界経済の短期的な回復は、ロシア軍によるウクライナ侵攻によって見通せなくなった。ただし開戦前夜までの指標を見る限り世界経済には強さがあり、平和と繁栄への希望も失わないようにしたい──。
ところが、その後の1カ月で二つの追加的な展開があって、残念ながら情勢はますます厳しくなっている。第一は急激な円安の進行で、後述するように日本国内のインフレ圧力が高まっていること。第二は肝心の中国、しかも上海や長春などの先進経済地域で新型コロナウイルスの新規感染者数が急増し、目先の世界牽引(けんいん)力が急低下していることである。
要はますます不透明になったということなのだが、エコノミストとしては不透明な中にも何らかの目星をつける必要がある。特にインフレ率についてはそうだ。
図1は国際商品の値動きを示すCRB指数の前月比伸び率を3カ月平均して年率換算したもので、いわばリアルタイムの商品インフレ率を取り出したものである。CRB指数は約4割が石油、天然ガスなどのエネルギー、4割が小麦などの農産物、2割がニッケル、アルミ、金、銀などの金属で構成されており、現下のインフレを比較的正確に反映していると期待できる指数である。
価格転嫁にはタイムラグ
青線はドルで表記されたオリジナルのインフレ率、赤線は円価換算した上でのインフレ率だ。21年以降、三つのインフレの波がある。3番目の波を見ると、急激な円安がいかに日本国内のインフレ率を押し上げ得るかがよく分かる。こうした川上のインフレが徐々に価格転嫁され、最終的には我々の生活を脅かしかねない消費者物価のインフレとなってくるわけだ。
一方…
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週刊エコノミスト
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