教養・歴史書評

時間の流れが速すぎる現代に、ゆったりした生物時間をくれる本=高部知子

速すぎる現代社会にゆったりした生物時間を

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 私が初めてシリーズものを全巻読破したのは『ファーブル昆虫記』だった。幼い頃から気管が弱く学校を休みがちで、登校できても息苦しくなると休み時間は校庭で遊べなかったため、机に本をドサッと置いて読みふけっていたのを思い出す。こうしてためこんだ知識はやがて大人になってから突然、点と点がつながる快感を私にくれた。例えば「フンコロガシ」。ファーブルのおかげで生物好きに育った私は、その後も昆虫、哺乳類、人間、そして歴史文化へと知識欲が広がっていき、エジプト文明に興味をもっていた頃、またフンコロガシに出会った。しかも神様として。エジプト文明では「スカラベ」と呼ぶフンコロガシ、これがファーブルとつながった時、長い年月、興味の赴くままに本を読み続けていると、こんな面白いつながりがわかるんだ!と感激したものである。

 相変わらず生物に興味が尽きない私には、愛読している何人かの生物学者がいる。その一人が本川達雄氏。『ゾウの時間 ネズミの時間』はベストセラーになっているので、ご存じの方も多いかもしれない。その本川氏の新刊『ラジオ深夜便 うたう生物学』(集英社インターナショナル、1870円)を読んだ。生物学好きには間違いなく響く内容で、『ゾウの時間 ネズミの時間』のさらなる説明をはじめ、歩行や環境など、人間と他生物…

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