ゼロコロナ政策で広がる混乱 背景に指導部の内部抗争=金子秀敏
有料記事
新型コロナウイルス対策で約1カ月前から都市封鎖した中国上海市では、自宅隔離の住民の食料が尽き「封鎖飢餓」が発生した。4月20日、市内の復旦大学で、盾を持った機動隊が包囲し学内で学生と衝突したといううわさが広がり、SNS(交流サイト)に動画も流れた。
「起(た)て、飢えたるものよ」という革命歌「インターナショナル」を歌い、石やビンを投げる学生。機動隊がリーダーらしい男を連行する様子などが映っている。
騒ぎに前後して、上海市郊外や隣接する江蘇省、浙江省の中小都市で住民が地域封鎖のバリケードを壊し、街頭に出て「食い物よこせ!」と叫ぶ動きも散発した。首都北京市でも感染が拡大し、封鎖に備えた住民がスーパーで野菜をパニック買いする混乱が起きた。
封鎖は実質治安政策
復旦大学の事件当日は、上海市が「ゼロコロナ(清零)」の目標を達成して封鎖を解除するとうわさされていたが、反対に「封鎖措置の強化」が通達された。隔離中の集合住宅のエントランスを鉄板や鉄柵で囲い監獄化する。「ハード・ゼロコロナ(硬清零)」と称しているが、防疫対策ではなく飢餓暴動を防ぐための治安政策だ。
通達を地区に伝達した市幹部が「これは軍令だ。(市政府には)意見を言う余地がない」といった発言記録がSNSに流れた。
上海市には党中央政治局委員で衛生担当の孫春蘭副首相が北京から乗り込み指揮している。「習近平総書記の指導に従い」を枕ことばにして、全市でPCR検査を繰り返し、発見した陽性者を地域の居住者ごと集中隔離施設に送り込んだ。こうして社会をゼロコロナ状態に保つ「ダイナミック・ゼロコロナ(動態清零)」政策だ。
だが急設の集中隔離施設は下水道も収容者に食料を供給する要員も不十分で、すぐに汚水地獄、飢餓地獄で破綻。かわって陽性者の住む集合…
残り559文字(全文1309文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める