国際・政治東奔政走

軍拡に傾斜した「外交の岸田」 どうなる対中戦略=伊藤智永

バイデン大統領の「意図的失言」に岸田首相も「誓約」連発=伊藤智永

 バイデン米大統領の来日中、日本海及び東シナ海とその上空は軍事的緊張が高まった。中国軍機が来日前から台湾南西部の防空識別圏(ADIZ)に侵入を繰り返し、大統領来日の5月22日には14機が出撃。離日した同24日午前から午後にかけ、中国空軍とロシア空軍が爆撃機各2機と情報収集機などの編成を組み、太平洋上を含む長距離を共同飛行する異例の「合同パトロール」を実施した。岸信夫防衛相は「日米豪印4カ国(クアッド)首脳会合への示威行動を意図したもので、これまでより挑発度を増す」と非難した。

 中国海軍も5月22、23日、フリゲート艦2隻が対馬海峡を北上して東シナ海から日本海に入り、沖縄本島と宮古島の間をミサイル駆逐艦が南下して太平洋に出た。

 米国はバイデン氏の日韓歴訪中、北朝鮮がミサイル発射や核実験を準備していると警告し、沖縄の嘉手納基地に配備された核空中指揮統制機「E-4B(通称ナイトウオッチ)」や複合情報収集任務機(同コブラボール)」を朝鮮半島周辺・日本海上空に飛ばした。ナイトウオッチは、全面核戦争時に大統領が空中でここから指揮を執るため「世界の終わりの飛行機」とも呼ばれる。飛行ルートや目的地は通常明かされないが、異例の情報開示で北朝鮮をけん制したのだ。北朝鮮も手を出せなかったのか、バイデン氏の離日直後、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など3発を発射。3日後、国連安全保障理事会は米国主導の北朝鮮制裁決議案を採決したが、中露両国の拒否権で初めて否決された。ウクライナ侵攻後の国際力学は、確実に東アジア情勢へ及んでいる。

台湾防衛に「米軍介入」

 バイデン氏来日のハイライトは、日米首脳会談後の共同記者会見で、台湾有事の際に台湾防衛のため、米国が軍事的に関与する意思があることを明確に表明した場面だった。米国人記者の質問にバイデン氏は「イエス」と明言。驚いた記者の再確認にも、手元のメモを見ながら「それが我々のコミットメント(誓約)だ」と述べた。軍事的関与の意思をはっきり言わずに中国の出方を抑える米国の「あいまい戦略」の転換か、と報道陣はざわついた。直後に米政府広報担当者らが「政策変更はない」と沈静化に努めたが、ウクライナ侵攻の初期段階で米国の軍事的関与を早々に否定して批判されたバイデン氏が、国策転換と別に軍最高司令官としての強い決意を示す政治的効果を狙った「意図的失言」との見方が有力だ。

“勇み足”では岸田文雄首相も負けていない。バイデン氏との会談で、「防衛力を抜本的に強化し、防衛費の相当な増額を確保する決意」「反撃能力(従来の表現は敵基地攻撃能力)を含めてあらゆる選択肢を排除しない」「革新原子炉及び小型モジュール炉(SMR)の開発及び世界展開の加速」など大胆な「誓約」を連発した。いずれも自民党内の一部の意見が首相宛てに提言…

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