新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 書評

年配の男が主人公の、小説でしか書けない短編6作=楊 逸

歳月、秘密、記憶の中に生の苦み、温かさを読む

×月×日

 雨の多い春。じめじめする日々の中でもマスクをつけて「隔離」に努めるので、「世離れ」が激しく進んでいるなと思うのは私だけなのだろうか。

『Y字橋』(佐藤洋二郎著、鳥影社、1760円)。この題名が、「人生の分岐点に立つ」という感覚に響いて、読まずにはいられなかった。

 63年ぶりにY字橋を渡る主人公・諸星健一は、小学1年生のある雨の日に、初めて「女」という存在をのぞき見るような体験をする。その行為は「卑怯(ひきょう)なことするな、弱い者苛(いじ)めをするな」という父の言いつけに反したと悟って、「ひどいことをした、申し訳なかった」という気持ちに苛(さいな)まれ、以降、相手の少女と口がきけなくなる。

残り1011文字(全文1335文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事