教養・歴史書評

年配の男が主人公の、小説でしか書けない短編6作=楊 逸

歳月、秘密、記憶の中に生の苦み、温かさを読む

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 雨の多い春。じめじめする日々の中でもマスクをつけて「隔離」に努めるので、「世離れ」が激しく進んでいるなと思うのは私だけなのだろうか。

『Y字橋』(佐藤洋二郎著、鳥影社、1760円)。この題名が、「人生の分岐点に立つ」という感覚に響いて、読まずにはいられなかった。

 63年ぶりにY字橋を渡る主人公・諸星健一は、小学1年生のある雨の日に、初めて「女」という存在をのぞき見るような体験をする。その行為は「卑怯(ひきょう)なことするな、弱い者苛(いじ)めをするな」という父の言いつけに反したと悟って、「ひどいことをした、申し訳なかった」という気持ちに苛(さいな)まれ、以降、相手の少女と口がきけなくなる。

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