習主席と李首相が別の道を歩み出した=金子秀敏
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大きな党内抗争の余波?
外交トップ人事の迷走=金子秀敏
中国外交のトップ人事に大きな混乱が起きている。ロシアのウクライナ侵攻と米国の対中包囲政策の影響だ。習近平国家主席の党総書記3選をめぐる党内抗争の行方にもかかわってくる。
中国の外交指導の現体制は、楊潔篪(ようけつち)党中央外事工作委員会弁公室主任(党中央政治局委員)と王毅国務委員・外相(党中央委員)。今年秋の共産党第20回党大会以後は、楊氏が年齢の関係で引退して王氏に代わり、次期外相はロシア通の外務省筆頭次官・楽玉成氏の昇格が確実と見られていた。
楽次官はロシア勤務が長く、習主席とプーチン露大統領の親密な首脳外交を支えてきた人物だ。ソ連の崩壊をモスクワの中国大使館で目撃し、欧米の民主化外交に警戒心を持ち、習主席の信頼が厚い。
楽次官は2月4日、北京冬季五輪の開会式当日に行われた習近平・プーチン首脳会談後、記者会見で「中露協力には上限がない。協力に終着ステーションはなく、あるのは給油ステーションだけだ」とブリーフィングしていた。
ロシアがウクライナに侵攻すると、米国はロシアを経済制裁すると同時に、ロシアを支援すれば制裁すると中国にも矛先を向けた。在米資産の凍結を恐れる共産党高官の間に衝撃が走り、ロシア一辺倒の習主席に批判が高まった。
これが引き金になって、都市封鎖による新型コロナウイルス対策や景気の悪化など習政権への不満が高まった。3月半ばには朱鎔基(しゅようき)元首相が習氏の総書記3選に反対する意見書を党中央に出したといわれ、党中央弁公庁が「引退指導者が党中央の決めた政策を妄議しないように」という通達を出した。
党内抗争が激化する中で、対露外交失敗の責任を負わされたのが楽次官だ。5月下旬、香港紙が、国家ラジオテレビ総局の筆…
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週刊エコノミスト
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