国際・政治チャイナウオッチ 中国視窓

腐敗はびこる金融機関の排除へ中央銀行が新戦略=神宮健

金融リスク処理工程確立へ

高リスク機関の淘汰狙う=神宮健

 中国では、たびたび地方の銀行の経営破綻が見られる。過去数年でいくつかの地方銀行が経営破綻に陥っているが、最近も4月に河南省の複数の村鎮銀行(農村部の農業金融を担う地域金融機関)で預金が引き出せない事件が生じている。これらの村鎮銀行は、同一の大株主により支配されており、銀行と大株主の違法行為が疑われて、現在は捜査されている。

 地方金融機関の問題がくすぶる中、中国人民銀行(中央銀行)は22年4月に「金融安定法」の草稿を発表した。成立までに修正を経ると予想されるが、基本的な方針はうかがえる。具体的には、金融機関の破綻の際に、金融機関(やその株主)自体の責任、地方政府の管轄地における金融安定に対する責任、金融監督部門の監督責任を明確にして追及する一方、破綻処理において法治化・市場化によるリスク処理メカニズムを構築する。

背景に腐敗や倫理崩壊

 最近の地方銀行の破綻を振り返ると、大株主や実質的支配者による銀行資金の流用・占用が見られ、地方の金融監督機関が地銀側に買収される場合もあったことから、各関係者の法的責任の強化が叫ばれていた。

 ここで、法治化とは、法規によって責任や損失を負う主体を明確化し、また、破綻処理プロセスにおける恣意(しい)性を排除して一定のルールを定めることだ。

 市場化とは市場メカニズムの利用のことで、具体的には入札による問題金融機関の資産・負債・業務の処理、減資等の措置である。債権者の債権も全額は保証しない。長らく中国の金融界にはびこる「暗黙の元本保証」と、それによるモラルハザードも打破する。

 金融機関の破綻処理メカニズムを見ると、まず、リスク処理の対象となっている問題金融機関が自力でリスクを解消する。株主・実質的支…

残り583文字(全文1333文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事