安定成長期の中国経済の主役に20代消費者が登場=劉芳
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化粧品、伝統菓子、サブカルチャー……世間体に縛られない消費台頭
中国では今、消費の主役交代が起きている。主力消費者層が1970~80年代生まれから、95~2000年代生まれへと変わる中で、若年層をターゲットとした新興メーカーが続々と誕生している。
中国で小売りの新時代到来=劉芳
2021年の中国の消費市場は、新型コロナウイルス感染拡大による低迷から回復し、社会消費品小売総額(中国における消費動向を示す指標)は前年比12.5%増を実現した。だが、下半期の新型コロナ再流行により、消費は低迷。22年に入っても、感染力の高いオミクロン株の拡大と、「ゼロコロナ政策」が中国経済に大きなマイナスの影響をもたらし、第1四半期(1~3月)の成長率は3.3%にとどまった。
そのため、22年の個人消費は決して楽観的ではないが、独占禁止法や小売りイノベーションの深化、そして近年みられる中国における主力消費者層の世代交代が消費市場の安定成長を支えるであろう。
中国における主力消費者層はここ10年、1970~80年代生まれだったが、近年では、消費財メーカーや流通・小売企業がターゲットとする消費者層の若年化が顕著に進んでいる。今後、中国若年層がけん引する消費は、消費・流通市場の変革を本格化させ、「中国ニューリテール(小売市場の刷新)」を促進する重要な要素となるであろう。
では、今後消費をけん引する中国の若年層の特徴は何なのか。第一に、時間的、また生活的な余裕を持ち、世間体に縛られずに目新しさを追求している。これらは各国の若い世代共通の価値観ではあるものの、中国の若年層は豊かな社会環境下で育った結果、ポジティブな消費価値観を有している。また、他の世代に比べて強い愛国心を持ち、中国文化への共感が強いのだ。
このような独特な価値観を持つ若年層を引きつけるため、中国新興メーカーや流通・小売企業は、新たな商品開発や業態開発に取り組んでいる。商品面では品質を重視するだけでなく、今まで注目していなかったデザインやスマートさ、斬新さなど新たな価値を提案し、プレミアム感を出している。中国若年層を取り込むためには、これまでの品質の考え方と異なる「ニュークオリティー」が求められているのだ。
古典風デザインの容器
例えば、化粧品業界はとりわけ成功事例が多くみられる。17年3月に浙江省杭州市で設立された化粧品メーカー「花西子」は創業間もないが、20年の取引総額はすでに30億元(約600億円)を突破し、21年3月には日本のアマゾンでも販売を開始した。
原材料には肌に優しい天然植物由来のエッセンスを配合し、容器を中国古典風の彫刻デザインとして他社と差別化している。ヒット商品である彫刻リップクリームは、浮き彫り工芸を用い、きれいな花柄や鳥などの模様が商品本体に彫ってある。いわばリップクリームでありながら、工芸品でもあるのだ。
また、中国少数民族の美術要素をパッケージに入れたコラボ商品も開発した。例えば、雲南省シーサンパンナ・タイ族シリーズの商品では、タイ族独自のクジャク文化をアピール。クジャクの模様を入れたアイシャドーや、同心錠(古代縁結びの印)の形のリップクリームを開発した。
花西子は、若年層消費者が好む中国古典風デザイン及びデザインの由来となる伝統文化をSNS(交流サイト)で積極的にアピールすることで、20代の女性の心をつかんでいる。花西子以外にも、「ZEESEA」や「花知暁」などの中国新興メーカーの化粧品ブランドが次々と現れている。
以前は、パッケージに付加価値をつけることは考えられなかったが、中国の若年層消費者はより高付加価値を求めており、また付加価値に対してお金を支払う意思も持ち合わせている。そのため、今後は「ニュークオリティー」をセールスポイントにする商品はより多く登場するとみられる。
オープンで「安全」PR
商品面の変化以外に、若年層消費者の嗜好(しこう)に合わせた新業態・新体験の開発も注目されている。特に、化粧品サンプルを中心に販売する専門店や、中国伝統菓子を改良した菓子専門店などがここ数…
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週刊エコノミスト
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