賃金の名目上昇率2%ではインフレ目標2%が無理な理由=愛宕伸康
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「2%目標」を金科玉条とすべきではない=愛宕伸康
6月10日に米財務省から「為替報告書」が公表された。2018年4月同様、日本銀行のイールドカーブ・コントロール(YCC)による緩和継続で日米金利差が拡大し、年始から11%円安になったと指摘している。
為替報告書とは、為替レートの操作によって不当な利益を得ている国がないかを調査し、半期に1度、米議会に提出する資料のことで、日本は現在、監視対象国に指定されている。
日本銀行がYCCで金利を抑制する理由は、言うまでもなく「物価安定の目標」である消費者物価の前年比2%を安定的に実現させるためである。米財務省にとやかく言われる筋合いはない、と言いたいところだが、過度に円安が進むと輸入物価の高騰につながるため景気に悪影響が出る。5月の輸入物価は、契約通貨ベースは前年比26.3%、円ベースでは43.3%で、既にかなりの影響が出ていることが分かる(図1)。
日本銀行は物価目標を「2%」にする理由としてグローバル・スタンダードを挙げ、欧米中銀と同じ目標にしておけば「長い目で見て為替レートの安定にも資する」と説明する。だが、為替は不安定化している。「物価目標」という金融政策スキームの最大の弱点は、政策運営の柔軟性が失われることだ。「2%」がグローバル・スタンダードというなら、柔軟に運営することもまたグローバル・スタンダードだ。「2%」のハードルが気の遠くなるほど高い日本の場合はなおさらだ。
伸びない雇用者報酬
「2%」は日本にとってどれほど高いハードルなのか。図2は実質雇用者報酬と消費者物価を、1990年を100として日米で比較している。実質雇用者報酬は名目雇用者報酬を消費者物価で割って計算した。明らかに消費者物価の伸びと実質雇用者報酬の伸びがリンク…
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週刊エコノミスト
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