機械受注は「過去最高」でも鈍化懸念=藤代宏一
日本株を予想するうえで筆者が重視しているのは、工作機械受注統計(日本工作機械工業会)である。
工作機械業界は、決して大きくはない業界規模でありながら、その受注サイクルが世界経済の包括的指標である経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数と連動するほか、アナリストの業績予想であるTOPIX予想EPS(1株当たり利益)とも一定の連動性を有する。
さて、工作機械の5月の受注額(原数値)は1533億円と高水準を維持した。筆者作成の季節調整値は前月比プラス1・7%、1702億円と今回のサイクルのピークを更新し、過去最高を記録した。これだけみると好調そのものだ。一方、前年比伸び率に目を向けると5月はプラス23・7%で増勢が鈍化している。グラフの印象が「水準」と「伸び率」とで大きく異なることに留意したい(図1)。
世界経済の方向感は、日本が改善傾向を維持する半面、アジアは5月末までの中国のロックダウンの影響によって下押しされ、米国と欧州も下を向いている。中国のロックダウンは5月末をもって解除されたものの、正常化には相応の時間を要すだろう。
予想EPSにも頭打ち感
また、欧州はエネルギー需給が逼迫(ひっぱく)する冬場に向けて下振れリスクが大きい。米国は消費者マインドが極端な悪化を示すなどインフレのマイナス影響が深刻である。工作機械受注はこうした風向きの悪さと一致しているように見え、TOPIXの予想EPSも前年比伸び率でみると頭打ち感を強めている。
工作機械受注のサイクルを確認するため、縦軸に工作機械受注の水準(36カ月平均からの乖離(かいり))、横軸に方向感(6カ月前比)をとった循環図を確認する。直近値が位置する右上領域は水準も伸び率も高い「好況」を示す。通常は反時計回りに四つの局面を進む。
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週刊エコノミスト
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