アフターコロナの働き方も「経営戦略」次第=橘大樹
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テレワーク、副業の今後を考える
在宅勤務や副業など新しい働き方の本質は、「先進」が正しいという一方向ではなく各企業の経営判断だ。
出社を求めないヤフーとNTT、求めるテスラと米グーグル=橘大樹
コロナ禍のもとで進んだ企業のテレワーク(在宅勤務)が、アフターコロナ時代においても平時の働き方として導入が進められている。中には、テレワークをさらに進化させ、より魅力ある働き方が可能な人事制度を打ち出す企業が現れている。
IT大手ヤフーは、今年4月から、全ての社員が全国どこでも自由に居住できる「どこでもオフィス」を拡充した新制度を導入した。従来は午前11時までに出社できる範囲に社員の居住地を限定していたが、日本国内であれば、飛行機での通勤も可能になった。出社を前提としない新しい働き方をさらに推し進める施策といえる。NTTグループは、約3万人の社員を基本的にリモートワークとする新制度を同7月にスタートした。勤務場所を「社員の自宅」と定め、オフィスへの出社は「出張扱い」にするというコロナ禍以前の働き方では想定できなかった制度だ。
ほかにも、ディー・エヌ・エー、アクセンチュア、セガサミーホールディングス、ミクシィなど、場所にとらわれない働き方を打ち出す企業が相次いでいる(表1)。
マスク氏は出社を要請
一方、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、この時流の逆をいくメッセージを発していたことが報道され、話題になった。報じられたのは社内向けに送ったとされるメールについてで、「リモートワークはもう認めない」「在宅勤務の希望者は、週に最低40時間はオフィスに出社する必要がある」「もし出社しない場合は退職したとみなす」などという内容だった。
米国でも日本でも、労働基準法の法定労働時間は週40時間である。マスク氏のメッセージは、法定労働時間分はオフィスに出社して働き、時間外・休日に勤務する分だけなら在宅勤務を承認するというものだ。先に挙げた国内企業とは対照的に、オフィスという「場」にこだわった考え方といえる。
また、米グーグルは、22年4月に週3日以上の出社を促し、同年6月にはカリフォルニア州の本社地区に新社屋を開設した。オフィスでの交流のしやすさと仕事に集中できる環境づくりを目指した(同社の担当ディレクター)という。
ヤフーやNTTグループは、社員の幸福と健康を考えた先進的で正しい人事制度を発表し、テスラやグーグルは、出社を求める時代遅れの施策をとっているのか。
労働法専門の弁護士である筆者から見て、答えは「どちらも正しい」だ。マスク氏のメッセージは、確かに言い方は乱暴かもしれない。しかし、その内容自体は、むしろ雇用契約の原理原則に沿ったものといえる。雇用契約において社員は、賃金を得て生活を営む代わりに、企業の指揮命令に従った労働を誠実に遂行する義務(労働義務)を負っている。つまり、企業は、労働の内容・方法・場所などに関して指揮命令権を持っており、社員はそれに従って勤務しなければならない。
したがって、企業が「社員は平日に毎日出社してフルタイム勤務せよ(最低週40時間は出社せよ)」と指示すれば、社員はそれに従って働く義務を負う。もしその指示に反して在宅勤務ばかりしていたら、労働義務を果たしていないことになる。契約を順守しない以上、契約終了(退職)になることもあり得る。
出社を求めるか、在宅勤務を広く認めるかは、企業の裁量によりジャッジされることだ。グーグルも、在宅勤務ではリアルに顔を合わせて雑談からアイデアを生むことができないことや生活との境界が曖昧になって必ずしも仕事に集中できないという判断から、交流と集中をコンセプトに掲げるオフィス作りをしたといえる。
経営層の「本音」
在宅勤務などの新しい働き方が社員に歓迎されているが、経営層や人事労務責任者の「本音」がそこにあるとは限らない。在宅勤務には、コミュニケーションが取りづらい、チームの一体感が希薄になる、仕事に集中できず効率が低下する、できる業務が限られるなどの課題も指摘されている(表2)。
こういったリモートワークの現実もあり、筆者としてはコロナ動向や育児・介護などに配慮しつつも「基本、出社を求めたい」という点に経営側の本音があると感じる。
働き方に対する社員の要望と、企業の労務管理が衝突するケー…
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週刊エコノミスト
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