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エネルギー安保 再エネ開発こそ自給率改善の道=金山隆一
温室効果ガスゼロを達成するためのリアルで達成可能なプランが必要だ。
1次エネで「G7最下位」
再エネ主力電源化へ日本の秘策=金山隆一
「日本の1次エネルギー自給率はG7の中でも最低の11%」
今年5月に経済産業省が示した日本のエネルギー自給率の低さは「持たざる国」日本の国力の弱さを改めて認識させた。米国とカナダは100%を超え、英国も75%、最も低いイタリアでも日本の2倍以上だ(図)。
この状況で日本はいま、(1)ウクライナ情勢を受けた石油ガス価格の高騰、(2)3月の東北地震で起きた老朽火力発電所事故による停電危機、(3)ロシア・サハリンのLNG(液化天然ガス)遮断──という3重苦に見舞われ、今冬の大停電が危ぶまれている。
エネルギー安全保障は日本が直面している「経済安全保障」のいわば“一丁目一番地”だ。岸田文雄首相は7月14日の会見で「今冬に最大で9基の原子力発電所を再稼働する」と表明したが、電力会社が再稼働を申請した25基のうち原子力規制委員会の審査を通過した計画を追認したに過ぎず、「新規の再稼働がない点だけが分かり、危機に対処した政策とは言えない」との声が電力業界で上がった。
30年に再エネ3割超へ
日本は2050年にカーボンニュートラル(地球温暖化ガス排出の実質ゼロ)を達成する国際公約を掲げる。目標達成に向け21年5月には菅義偉前首相が「30年の温室効果ガスの削減目標を13年度比で46%削減する」と表明。この野心的な目標に合わせ、経済産業省は30年のエネルギー基本計画(エネ基)の日本の電源構成を見直し、再生可能エネルギーを19年の18%から36~38%、原発を同6%から20~22%に設定し直した(表)。
しかし、審議委員の橘川武郎国際大学副学長は、「達成不可能な数字。LNGや石炭など化石燃料に50%以上依存することになる」と独自試算を発表した(表)。ただし、橘川氏は「30年のエネ基の目標は達成できなくとも、50年のカーボンニュートラルは実現できる」と断言する。究極の国産エネルギーである風力、太陽光、地熱など再生可能エネルギーの全面的な活用だ。
しかし、太陽光は天候による変動が激しく、地熱は必要な容量の開発に限界がある。原発に代わる規模が期待される洋上風力も開発に時間がかかる上に需要地までの巨大な送電線の敷設費用を誰が負担するかなど問題は山積している。
それでも、カーボンゼロ達成と自給率向上の同時達成に向けては再エネの主力電源化を実現する以外の方法はない。そのためには、いまある石炭火力にアンモニアを混ぜて燃やし、最終的には、(1)アンモニア100%の火力発電所、(2)天然ガスの改質による水素製造、(3)再エネで余剰になる電気を使った水素製造──を目指すのだ。世界では米欧中心に急速に動き出している。
日本でこの取り組みは一部の企業で始まったばかりで、国のマスタープランはまだ出てきていない。第6次のエネルギー基本計画の達成が危ぶまれるタイミングと合わせ、国のエネルギー計画にアンモニアと水素をどう組み込むか、年限と達成率にまで踏み込んだ国のプランを、技術革新のスピードに合わせ毎年改定していくような意気込みが必要だろう。
(金山隆一・編集部)