習近平氏が米中関係改善を急ぐ事情=金子秀敏
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容易でない米中関係改善 外交で守勢に立つ習体制=金子秀敏
インドネシア・バリ島の主要20カ国・地域(G20)外相会合に出席した米国のブリンケン国務長官と中国の王毅外相による米中外相会談が7月9日、開かれた。7月末に米中首脳会談を開くための準備会談とされている。
米中関係の改善は、バイデン大統領にとっては11月の中間選挙、習近平国家主席にとっては8月の北戴河(ほくたいが)会議(共産党指導部と長老の密室会議)に向けた重要な政治的成果だ。
会談は5時間に及んだ。議題は台湾、新疆、人権問題からウクライナ問題まで網羅的に行われた。米国はロシアのウクライナ侵攻を中国が支援しないよう強く求め、中国はトランプ前大統領時代の対中制裁関税の解除を求めた。
米国の狙いは、対中制裁関税の廃止と引き換えに、中国にロシアを説得させて、ロシアとウクライナの停戦を実現させることだ。
対ロシアだけではない。中国の対米輸出再開には新疆ウイグル自治区の強制労働など人権問題の改善も実現しなければならない。
米中は6月10日のオースティン国防長官・魏鳳和国防相会談を皮切りに、(1)同13日サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)・楊潔篪(ようけつち)中央外事工作委員会弁公室主任会談、(2)7月5日イエレン財務長官・劉鶴副首相オンライン会談、(3)同7日ミリー米軍統合参謀本部議長・李作成統合参謀部参謀長電話会談──など政治、経済、軍事で話し合いを積み上げてきた。
親露路線覆せば権威低下
この間、6月14日に習氏の親露外交を担ってきた中国外務省の楽玉成次官が更迭され、国家広電総局の副局長に左遷された。それと同時にウイグル人権問題をにらんだ人事も発表された。同日、新疆自治区でウイグル人収容所を作り、チベット自治区でチベット人…
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週刊エコノミスト
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