景気後退は起きるのか 米株価の不気味な停滞が示唆するもの=渡辺浩志
有料記事
景気後退を警戒する市場と楽観のFRB=渡辺浩志
金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めによって米国が景気後退に陥るとの警戒が高まっている。
米S&P500株価指数は、年初から6月中旬にかけて23%ほど下落した。過去11回の景気後退局面での同指数の平均下落率は26%。これに迫る株価下落は、市場が景気後退をおおむね織り込んだことの証しだ。
一方、連邦公開市場委員会(FOMC)は、2022~24年の実質GDP(国内総生産)成長率が潜在成長率並みで推移すると予想する(図1)。景気後退期の成長率は前年比でマイナス圏へ落ち込むのが一般的だが、当局の予想はそれとは明らかに異なるものだ。パウエルFRB議長は、景気後退を起こさずインフレを抑制する軟着陸が可能と述べている。
過去を振り返ると、米国では政策金利が中立金利(景気を熱しも冷やしもしない金利水準)を上回ると景気減速、名目潜在成長率を上回ると景気後退に陥る傾向がみられる。名目潜在成長率は米国経済への投資で得られるリターン、政策金利は投資コストだ。
リターンがコストを上回る限り、実物資産への資金流入と景気拡大は続く。
FRBは政策金利を3.75%まで引き上げようとしているが、これは中立金利(2~3%)を超えるものの、名目潜在成長率(約4%)は超えない。それゆえFRBは、景気は減速すれども後退せず、と予想しているのだろう。
異常な不均衡はない
だが、賃金や家賃の高騰で高インフレが長引けば、FRBは4%を超える利上げを余儀なくされ…
残り408文字(全文1058文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める