マネーが増えても物価が動かない日本の摩訶不思議=愛宕伸康
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もしかすると我々は、世界の常識に当てはまらない、極めてまれな国に住んでいるのかもしれない。この国の物価は、いくらマネーが増えても動かないらしいのだ。
金融機関を通じて世の中に出回っているお金の量を示す「マネーストック」(以前「マネーサプライ」と呼んでいたもの)を、経済活動を表す名目国内総生産(GDP)で割った「マーシャルのk」。これを日米欧それぞれについて計算してみた(図1)。
新型コロナウイルス禍が拡大する前までは、日米欧とも滑らかなトレンドを形成しており、マネーストックと経済活動との間に安定した線形関係があるように見える。それが、コロナ対策に伴う大規模な財政・金融政策を受けて、いずれのマーシャルのkもそれぞれのトレンドライン(図の点線部分)から大きく跳ね上がっている。
これは、コロナ禍前の平常の経済活動に見合った状態をはるかに上回る、相当過剰な量のマネーが世の中に出回っていることを示唆している。
もし、コロナ禍前のマネーストックと名目GDPとの関係が頑健なものであるなら、コロナが収束して経済活動が正常な状態を取り戻すにつれ、マーシャルのkも元のトレンドに戻っていくはずだ。そこで、マーシャルのkの分子であるマネーストック(M2)と分母の名目GDPについて、コロナ禍前の2020年1〜3月期から22年1〜3月期までの伸びを日米欧で比較した(図2の左図)。
名目GDPが戻らない
最初に目に付くのは、米国のマネーストックの高い伸びだ。コロナ禍前と比べ36.4%も増加している。ユーロ圏も…
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週刊エコノミスト
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