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資源・エネルギー FOCUS

発電燃料「水素・アンモニア」の調達価格支援で国が見せた本気度=宗敦司

JERA碧南火力発電所の液化アンモニアタンク
JERA碧南火力発電所の液化アンモニアタンク

 脱炭素の目玉として期待される水素やアンモニアの発電燃料への活用に向け、経済産業省が調達価格の支援制度の導入を検討する。同省の山下隆一製造産業局長が7月19日、エンジニアリング振興協会の懇親会で明言した。価格支援が明確になれば、国内電源の4割近くを占める石炭火力発電ボイラーで、アンモニア燃焼による脱炭素化が進むことになる。

 経産省が検討する支援制度は「値差支援」と呼ばれ、事業者が発電燃料として水素やアンモニアを調達する際に、既存燃料との価格差を国が補填(ほてん)するもの。現状、アンモニアは肥料や化学原料用として年間100万トン程度を日本で使っており、8割は国内で生産、2割を輸入している。政府は今後、発電燃料用としてアンモニアを2030年で年300万トン、50年で同3000万トンの導入を目指している。

総額3兆円の投資規模

 現在の全世界の貿易量が年2000万トンであることを考えると、今後大規模なサプライチェーンの構築が必要だ。投資規模も莫大(ばくだい)で、年間100万トン規模のアンモニア製造設備の建設には1000億円の資金が必要。3000万トンでは総額3兆円が必要となる。この投資規模から考えても、燃料アンモニアは既存燃料と比較してコストが高い状態が当面続くとみられている。

 山下局長は「制度として値差支援をすれば、石炭火力発電のアンモニア混焼実証試験をスタートさせるJERA(東京電力ホールディングスと中部電力の共同出資会社)や他の電力会社も、ある程度の規模でアンモニアを買うことができる。そこで初めてサプライチェーンが構築される流れになる」と説明した。同席企業からは「追い風となる」「政府の本気を感じた」といった声が上がった。

 ただ、資源エネルギー庁を中心に値差支援制度の検討を進めていく考えだが、その具体的な内容は全くの未定で、まだ審議会も立ち上がっていない。具体的な支援制度も、例えば発電用と産業用ではもとの燃料との価格差も異なるため、用途によって支援の幅や、その方法なども変えていく必要がある。

 山下局長は「実際に社会に実装していく話なので、役所だけで考えて使えない制度を作ってもしょうがない。知恵やアイデアを我々にどんどんぶつけてほしい」と、制度設計への協力を業界に呼びかけるとともに支援制度の構築も「スピード感をもって進めていく」とした。世界各地で水素・アンモニアの活用計画が進む中、日本にもようやく追い風が吹きそうだ。

(宗敦司・エンジニアリング・ビジネス編集長)

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