教養・歴史書評

ネクラ官僚が清朝末期の英雄になる歴史のダイナミズム=加藤徹

 清末の太平天国の乱は世界史上最悪の内戦だった。14年間に及び、死者は推計7000万人以上。岡本隆司『曾国藩 「英雄」と中国史』(岩波新書、968円)は、この未曽有の騒乱を平定し、滅亡寸前の清王朝を延命させた政治家・曾国藩(1811─72年)の評伝である。

 彼に対する後世の評価は分かれる。清末の体制派は曾国藩を中興の名臣とたたえた。革命派は、清朝のため人民を虐殺したとののしった。中華民国トップの蒋介石は、曾国藩を褒めた。曾国藩は太平天国打倒のため英国など外国の侵略勢力と妥協した。蒋介石も中国共産党殲滅(せんめつ)を優先して日本と妥協した。中国共産党は、蒋介石と曾国藩を批難した。

 そんな曾国藩の実像は「容姿風采、物腰性格もごく地味だった。一昔前の表現なら『ネクラ』という印象がぴったりである」。

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