物価安定と雇用改善という「二兎」を追うリスク=真家陽一
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「雇用と物価の安定という目標の達成を最優先で確保しなければならない」。李克強首相は7月21日に主宰した国務院常務会議において、「中国経済の回復は第3四半期(7〜9月)が極めて重要」と強調した上でこう述べた。
中国の実質GDP(国内総生産)成長率は、第1四半期(1〜3月)が前年同期比4.8%だったのに対し、第2四半期(4〜6月)は0.4%と顕著に落ち込んだ。
要因は、中国政府が推進するいわゆる「ゼロコロナ政策」の下、新型コロナの感染が拡大した上海市が3月下旬から5月末まで約2カ月間、大規模なロックダウン(都市封鎖)を余儀なくされ、中国最大の商業都市の経済がまひ状態に陥った影響が大きい。結果、上半期(1〜6月)の成長率は2.5%と通年目標の5.5%前後を大幅に下回り、目標未達という異例の事態になりかねない状況だ。
5月31日には、落ち込んだ経済を立て直し、悪化する雇用を改善すべく、「経済安定化のための包括的政策措置」を公表。同時に物価の安定を重視してインフレ防止を図る意向も示した。この背景には、経済安全保障における基本方針がある。
中国は「第14次5カ年計画(2021〜25年)」において「発展と安全保障の統一推進によるハイレベルな平安中国の建設」を提起し、「国家経済安全保障の強化」の項目を新設。注力する分野として、食糧、エネルギー、金融を3本柱として掲げた。この方針を踏まえ、食糧安全保障では重要農産物の十分な供給の確保、エネルギー安全保障では石油・ガス輸入元の多元的な開拓、金融安全保障では金融リスク予防体系の整備などがうたわれている。
雇用改善も狙う
経済安全保障で食糧、エネルギー、金融の三つを重視する理由として、李首相は「経済運営を合理的範囲に維持する上で、雇用と物価は二つの重要…
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週刊エコノミスト
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