成長戦略としての都市化 中央政府の思惑通り進むのか=岸田英明
有料記事
「自動車や家電購入支援は(消費市場を刺激する上で)短期的には有効だが、長期的には農村出身者の市民化を加速させることが重要だ」。中国の著名な経済学者・王一鳴氏は7月中旬、北京であったフォーラムで訴えた。
自動車・家電購入支援は、足元で中国政府が推進している政策だ。中国経済は、債務増や少子化などの慢性的な下押し圧力に加え、住宅市場の不況やゼロコロナ政策、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などが重なり、景気見通しが悪化している。王氏はこうした状況を踏まえた上で、「2・9億人いる農民工(=出稼ぎ労働者)が都市に定住すれば、彼ら1人当たりの消費支出は30%前後増える」と経済効果を強調した。
2021年末の中国の都市化率は、常住人口ベース(=総人口のうち、都市で暮らす住民の比率)で64.7%、戸籍人口ベース(=都市戸籍を保有する人口の比率)では46.7%である。このギャップは、都市人口のうち3割が農村戸籍のままであることを意味する。農村で保障される住宅や耕作用地の権利を手放したくないことも理由だが、都市側の問題として、特に大都市で戸籍取得に高いハードルが課されていることもある。
中国政府にとって都市化の推進は、「第14次5カ年計画(21~25年)」の重要課題の一つでもあり、22年7月には「14・5新型都市化実施方案」を公布している。「方案」は人口500万人以下の都市に戸籍取得要件の緩和、取り消しを求めるとともに、500万人以上の「超大・特大都市(メガシティー)」にも新規戸籍取得者の人数制限をなくすよう奨励している。天津や広州は「方案」に先駆けて人数制限をなくしており、今後はメガシティーを代表する北京と上海の動きが注目されている。
北京はまだ狭き門
北京は住宅高騰や治安対応のために中国で最も厳…
残り590文字(全文1340文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める