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新幹線の開業遅れを総ざらい 並行在来線の課題もさまざま=佐藤信之

開業を控えた西九州新幹線
開業を控えた西九州新幹線

 今年は開業40周年の東北新幹線をはじめ、多くの新幹線が節目を迎えている。(鉄道150年 復活の条件 ≪特集はこちら)

九州・北陸・北海道で延伸に遅れ 地元負担や車両コストが重し=佐藤信之

 9月23日、西九州新幹線武雄(たけお)温泉(佐賀県)─長崎間が開業する。現在、博多から長崎へは在来線特急「かもめ」が運行しているが、西九州新幹線開業後は、博多(福岡県)から武雄温泉まで在来線特急「リレーかもめ」に乗り、武雄温泉で西九州新幹線「かもめ」に乗り換えて長崎に向かうルートになる(図)。

 博多からの下り1番列車は博多6時発の「リレーかもめ1号」で、武雄温泉で7時3分発の新幹線「かもめ1号」に接続する。武雄温泉での乗り換え時間は3分。同じホームの対面での乗り換えで、リレー号とは同じ号車に乗り換えればよいので、最短距離の移動で済む。九州新幹線の部分開業時に新八代で行ったのと同じ方法である。そして、新幹線「かもめ1号」は7時31分に長崎に到着し、所要時間は1時間31分となる。現在のダイヤでは、在来線特急「かもめ1号」は、博多5時55分発、長崎8時1分着で、所要時間は2時間6分であるため、西九州新幹線により30分短縮される。

 新幹線がつながらない武雄温泉─新鳥栖(佐賀県)間は、従来は新幹線と在来線を直通できる「フリーゲージ」での直通運転を予定していたが技術開発に失敗。国とJR九州はフル規格で進める意向だったが、佐賀県は、博多までの時間短縮効果が小さいのに地元の費用負担が大きいため、「もともと新幹線を求めていない」として、一から計画を見直すことを求めて、計画が止まってしまった。現状では計画が進展するメドは立っていない。

並行在来線の経営分離も

 また、新幹線開業で問題になるのは、従来そのエリアを通っていた在来線、つまり並行在来線の処遇だ。西九州新幹線が開業すると、長崎線の肥前山口(佐賀県)─諫早(長崎県)間は並行在来線として経営分離するが、実際は線路施設を佐賀県と長崎県が出資する社団法人が保有して、運行はJR九州が引き続き担当する。ただし、在来線特急は「かささぎ」として肥前鹿島(佐賀県)までの運行。佐賀方面に直通する電車も肥前浜(佐賀県)までで、経費削減のため肥前浜─諫早間は電気運転をやめてディーゼルカーとなる。経営分離しない諫早─長崎間も非電化となり、新型のハイブリッド車「YC1系」が使われる。

 他の新幹線も延伸計画に遅れが生じている。

 まず北陸新幹線は、現在東京─金沢間で営業中。その先は敦賀(福井県)まで延伸する計画で、2026年春の開業を目指して工事に着手。その後3年前倒しして、23年春に開業する予定だった。しかし、石川県と福井県の県境にある加賀トンネルでひび割れが発見され、開業は1年延期された。

 敦賀駅の工事も延期の理由になっている。もともとフリーゲージトレインにより敦賀駅から在来線に直通する予定だったが、18年に国はフリーゲージの開発を断念した。耐久性の検証に時間がかかり、車両コストも高額なためだ。

 このため敦賀駅で在来線との乗り換えが必要となった。敦賀駅は3階建てで、3階に新幹線ホーム、2階に乗り換えコンコースが設けられ、1階に在来線の特急ホームが整備されることになった。23年開業では、この工事の時間的な余裕がなかった。結局、開業の1年延期と、2658億円の工事費の大幅な増額が決まった。新幹線延伸後の在来線は、金沢─福井間と福井─敦賀間を中心に運行する。

 敦賀から新大阪までの延伸は、46年の開業を予定して手続きが進められている。ルートは、小浜駅(福井県)、京都駅、松井山手駅(京都府)付近を経由して新大阪までが想定されている。しかし大阪の経済界を中心に30年開業への繰り上げを要望している。

北陸新幹線延伸に向けて工事が進む敦賀駅
北陸新幹線延伸に向けて工事が進む敦賀駅

 北海道新幹線は、16年3月新青森(青森県)─新函館北斗(北海道)間を開業したが、30年に札幌まで開業する予定である。JR東日本は東北新幹線のさらなる高速化を実現し、東京─札幌間で航空輸送と互角に競争できることを目指している。なお、終点の札幌駅では、現在の駅にはホームの増設の余地がないとして、東側に新幹線用の駅を造ることになった。

 また、北海道新幹線の延伸により、並行在来線の経営分離が行われる。沿線自治体は協議会を作って議論してきたが、小樽─長万部(おしゃまんべ)間については鉄道の廃止を決定。小樽─余市間は旅客需要が大きいため異論も多い。

 函館─長万部間は、第三セクターに転換して旅客列車と貨物列車を走らせる案と、旅客をバスに置き換えて、貨物だけ運行する案が検討されている様子。貨物だけの場合、線路施設を北海道が保有する案が出ているが、国の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有・管理する選択肢もありうる。ただし、こちらは議論が進んでいない。

リニア27年開業は不透明

 リニア中央新幹線は、工事による大井川の水量への影響が問題視され、JR東海と静岡県が合意に至っていない。静岡工区で工事に着手できないため、27年に予定される品川─名古屋間の開業は遅れることが必至な状況だ。

 川勝平太・静岡県知事が沿線自治体で構成するリニア中央新幹線建設促進期成同盟会へ加入することが決まった。さらに川勝知事は、現行ルートを前提とすることも受け入れた。ただ、静岡県としてはルート選定に疑義ありとして、国とJR東海にしっかりとした説明を求めている。川勝知事の真意がどこにあるのか不可解である。

 一方、JR東海は減水に対する代替措置として、大井川上流の田代ダムの取水量を調整して減水分を補う案を示した。現在、静岡県は、本当に田代ダムの取水量を調整できるのかという疑問を持ち、実地に調査を進めている段階である。まだまだ議論は長引く見通しで、リニア問題は解決の糸口を見いだせていない。

(佐藤信之・交通評論家)

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