ドイツの脱原発、年内完遂は持ち越しか。緑の党幹部が運転継続に言及=熊谷徹
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ロシアがドイツへの天然ガス供給量を大幅に削減し、需給が逼迫(ひっぱく)していることから、ドイツが今年末に廃止する予定だった3基の原子炉について、運転期間が延長される可能性が浮上している。
ドイツではロシアのウクライナ侵攻以来、現在運転中の3基の原子炉を来年1月1日以降も運転するかどうかについて議論が行われてきた。しかし、ショルツ政権は、環境保護政党・緑の党の強硬な反対により、予定通り今年末までに脱原子力を完遂する方針だった。同党左派にとって脱原子力は1980年の結党以来の悲願だった。
だが、連邦議会のカトリン・ゲーリングエッカート副議長(緑の党)は7月25日に、ドイツ第1テレビ(ARD)のトークショーで、「ガス不足が深刻化して、病院での業務に支障が出るような緊急事態には、3基の原子炉の運転継続について、検討するべきだ」と語った。緑の党の有力議員が、運転継続を容認する可能性を示唆したのは、初めて。ショルツ首相は、「3基の原子炉のストレステストを実施した後、運転継続について決定する」と述べている。
この背景には、ロシアが海底パイプライン・ノルドストリーム1(NS1)のタービンの故障を理由に、1日のガス輸送量を6月16日以降通常に比べて60%減らし、7月27日以降80%減らしたことがある。独連邦系統規制庁(BNetzA)は、「ガス供給量が現在の低い水準のまま推移した場合、今年11月1日までにガス貯蔵施設の充填(じゅうてん)率を95%に高める目標を達成できない可能性が強い」と述べている。7月30日の充填率は68.1%だった。
ただし緑の党は、3基の原子炉に新たな核燃料を装荷する「稼働…
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週刊エコノミスト
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