FRBの楽観を打ち消す「需給バランス崩壊」の兆候=藤代宏一
「需給バランスの崩壊」が示唆する景気後退の足音=藤代宏一
代表的な経済指標の一つである米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況指数は、7月に52.8へと低下し、景気後退懸念が一部現実のものになりつつある実態を浮き彫りにした。
市場予想の52を上回ったとはいえ、調査項目の内訳をみるとバランスの悪さが目立ち、インフレ退治の代償がいかに大きいかを痛感させる結果となった。ヘッドラインを構成する項目は雇用が小幅に改善した(47.3→49.9)ものの、生産は増勢が鈍化し(54.9→53.5)、新規受注は一段と低下した(49.2→48)。反対に在庫は一段と積み上がり(56→57.3)、そうした中でサプライヤー納期は短縮化する(57.3→55.2)という構図である。
その他では、消費者物価の先行指標として注目される販売価格が60へ急低下した。半導体不足、物流の停滞といったサプライチェーンの修復と金融引き締めによる需要減少が相まってインフレ圧力が和らいでいるとみられる。
生産活動の先行きはどうか。新規受注と在庫の比をとった新規受注・在庫バランスに目を向けると、7月はリーマン・ショックと新型コロナウイルスの発生初期を除くとほとんど経験したことのない低水準に落ち込んでいる。新規受注が低下する中、在庫がリーマン・ショック時のピーク水準を上回り、需要と供給のバランスが崩れつつある様子がうかがえる。
既に長短金利差は逆転
在庫は需要増加を見込んで意図的に積み上げたものと、予想以上の需要減少に直面した「意図しない」ものが混在しているとみられ、必ずしも全てが過剰在庫というわけではないが、いずれにせよ、先…
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週刊エコノミスト
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