中国 激化する充電スタンドのシェア争い 日本と規格一本化の動きも 湯進
EV(電気自動車)の普及が急激に拡大する中国、米国、欧州では充電インフラの整備も急ピッチで進む。なかでも中国では、日本と共同開発した次世代急速充電規格の実用化が秒読みに入った。国際的な標準化を目指しており、充電器や関連部品で世界トップ水準の製造技術を持つ日本の商機は増える。»»特集「充電インフラ最前線」はこちら
充電インフラ市場も世界最大
中国新興電気自動車(EV)メーカーの上海蔚来汽車(NIO)が今年8月1日、石油メジャーの英シェルと共同で設立したEV向け電池交換ステーションが福建省の厦門市で稼働した。両社は25年までに中国に電池交換ステーション100カ所を設け、シェルは欧州でも自社充電ネットワークをNIOのユーザーに開放する。シェルは中国EV大手のBYDとも提携し、中国と欧州市場で充電サービスを進める。
シェルがEV充電事業で中国と組むのは、EV普及とインフラ整備で中国が世界最大・最速で進化しているからだ。中国EV市場の拡大に伴う充電インフラの不備や充電時間の長さが課題となっている中、中国政府もEV充電スタンドなど「新インフラ投資」を推進し、地方政府も続々と充電スタンド建設への支援を強化している。
中国政府は14年からEV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を中心とする新エネルギー車(NEV)の普及を推進し、NEV販売台数は2015年の33万台から21年に352万台(うちEVは約8割)に拡大。中国工業情報省など中央7部署は今年6月、大気汚染防止の重点区域で30年までに新車販売の半数をNEVとする目標を掲げた。
この電動化シフトに向け、補助金政策によって中国全土で充電インフラ整備を進めている。今年6月時点で公共の充電スタンドは152.8万台。このうち43%(66.5万台)は急速充電のスタンドだ。14年以降は、民営企業の充電スタンド業界への参入も可能となり、多くの充電設備メーカーが運営会社に転換している。
設置台数で充電設備メーカーの「特来電(TGOOD)」は28.7万台、同じくメーカー系の「星星充電」が28.4万台、国営送電の「国家電網」が19.6万台でトップ3社のシェアは50%に達する(表1)。充電器の出力は16年の69キロワットから現在150キロワットに進化。電圧を約800ボルトに高めた充電器が普及すれば、350キロワットの出力により5分の充電で200キロメートルの走行が可能となる。ただ事業採算が各社の課題で、特来電は直近3年間で累計赤字が5億元(約100億円)に達した。充電スタンド事業はビジネスモデルが未確立という課題に直面している。
スタンド計390万台
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一方、EVメーカーも自前で充電インフラを整備し、EV販売時に個人向けに設置したスタンドは計239万台に達する。中でも、BYDは今年6月時点で148万台と、中国全体の個人向け充電設備の62%を占めている。新興メーカーやネット配車企業は独自のビジネスモデルで、充電スタンドの設計、調達、設置を行っている。収益モデルこそ未確立だが、業界入り乱れて先陣争いが激化している。…
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週刊エコノミスト
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