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「物価認識」は同じでも日米でこうも異なる金利政策=愛宕伸康

日本も「物価安定が脅かされている」=愛宕伸康

 8月「ジャクソンホール会議」でのパウエル・米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派発言が市場を揺らしている。

「金利の上昇、成長鈍化、労働市場の軟化がインフレ率を低下させる一方、家計や企業にはいくらか苦痛をもたらすだろう。しかし、物価の安定を取り戻さなければはるかに大きな苦痛を伴うことになる」と強調し、「やり遂げたと自信が持てるまで(利上げを)続けるつもりだ」と締めくくった。

 既に鈍化の兆しがうかがわれている景気への配慮を期待していた市場参加者の望みは打ち砕かれ、その後、株価は大きく調整した。それでもFRBのインフレ抑制への強い姿勢は揺らがない。第2次オイルショック以来40年ぶりの高インフレである。「景気よりインフレ抑制」。FRBは完全に腹をくくっていると理解すべきだろう。

 パウエル議長の講演で興味を引いたのは、物価安定の定義に言及した点だ。1989年のグリーンスパン元FRB議長の言葉を引用し、「物価の安定とは、平均的な物価水準の予想される変化が十分小さく、緩やかで、企業や家計の経済的意思決定に事実上意識されない状態」と説明している。この定義に照らせば、確かに米国は既に物価安定といえなくなっている。

日銀の物価安定の定義

 翻って日本はどうか。実は、日本銀行も過去に幾度となく物価安定の定義を示している。その説明は一貫してこうだ。「物価の安定とは、家計や企業などのさまざまな経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」。意味は、グリーンスパン元議長の説明とほぼ同じ。我々は現在…

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週刊エコノミスト

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