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世界景気を映し出す「銅金レシオ」は2016年の谷に似る=渡辺浩志

 世界景気の現状把握には、企業景況感を表す購買担当者景気指数(グローバル総合PMI)が使われることが多い。だが近年、この指標は上下の振れ幅が大きくなっており、景気の基調をつかみにくくなっている。また、世界景気を取り巻く環境が目まぐるしく変わるいま、月次指標を待つのは悠長に過ぎる。

 このような局面では、市場の声に耳を傾けてみるのがよい。市場は世界中のありとあらゆるニュースフローを咀嚼(そしゃく)し、その影響度を瞬時に価格に反映するからだ。

 世界景気の現状を把握する上で特に有用な指標は、「銅」と「金」の価格比(銅金レシオ)だ。産業に不可欠な銅の価格は、世界の需要の強さを反映する。安全資産である金の価格は、世界の不確実性の大きさを表す。それゆえ銅と金の価格比は、需要と不確実性のバランスを表し、リアルタイムの世界景気を映す鏡となる。

 いま、銅金レシオは急落している(図1)。その水準はまだ景気拡大を表す領域にあるが、下落ペースは速く、谷は深そうだ。

 筆者は金融引き締めを背景に、銅は1トン=5200ドル、金は1オンス=1600ドル程度まで下落するとみる。その場合の銅金レシオは3.3倍となるが、これは2016年の景気の谷の深さに匹敵する。当時は米国の金融引き締めと中国からの資本流出や人民元安が重なるなど、現在の市場環境との共通点も多い。

この先EPSは10%減も

 世界景気を映す銅金レシオは、グローバルに事業を展開する米国企業の業績予想にも役立つ。図2の通り、銅金レシオの前年比は過去20年超にわたり、3カ月先の企業業績(S&P500株価指数の1株当たり利益、EPS)の前年比を高い精度で予測してき…

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週刊エコノミスト

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