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輸出に日本経済の「けん引役」を期待してはいけない=斎藤太郎

 世界経済は、新型コロナウイルスの影響で2020年に急減速した後、21年は高成長を記録したが、ここにきて減速傾向が鮮明となっている。

 コロナ禍からの回復ペースが速かった米国の実質国内総生産(GDP)は、22年1~3月期に続き4~6月期も前期比マイナスとなり、簡便的に景気後退(テクニカル・リセッション)とされる2四半期連続のマイナス成長となった。

 正式な景気循環は、全米経済研究所(NBER)が判断するが、その際に重要視する雇用、個人消費などの経済指標はおおむね堅調を維持している。

 テクニカル・リセッションが必ずしも本物の景気後退を意味するわけではない。ただしFRBは、たとえ景気後退を招くとしても、インフレ抑制のために金融引き締めを継続する、との姿勢を示しており、景気を軟着陸させるハードルは上がっている。

日本の景気は米国次第

 1970年以降の日米の景気循環を振り返ると、円高不況の80年代半ば、消費税率引き上げ時の97年のように、日本だけが景気後退に陥った例はある。その一方で、米国が景気後退局面入りした時には必ず、日本も景気後退に陥っている(図1)。米国が景気後退を回避できるかどうかが、日本経済の先行きを大きく左右することになりそうだ。

 米国以上に景気後退の可能性が高いのは欧州だ。ユーロ圏経済は、インフレ抑制のための金融引き締めに加え、ロシアのガス供給削減による悪影響が大きいため、景気後退に陥ることが予想される。さらに、ロックダウンの影響で22年春に急速に悪化した中国経済は、先行きについても「ゼロコロナ政策」による下振れリスクの高い状況が続く公算が大きい。

 日本の輸出額で各国のGDP…

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週刊エコノミスト

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