景気悪化が打撃それでも株価は100ドル台 米宿泊仲介2位のエアビーアンドビー 小田切尚登
有料記事
Airbnb 逆風続きでも業績は回復/49
エアビーアンドビーは宿泊レンタルを仲介するオンライン旅行代理店である。2008年に創業者でCEO(最高経営責任者)のブライアン・チェスキー氏が米国サンフランシスコの自宅アパートの家賃を捻出するために「エアベッド・アンド・ブレックファスト」と称して短期の貸し出しをしたのが始まり。これまで累計5億人超が宿泊し、年間ユーザーは1億5000万人に上る。
現在200カ国以上でビジネスを展開している。ミレニアル世代(1980年から90年代前半生まれ)が全体の利用者の5割を占めており、比較的安価な物件の比重が高いのが一つの特徴である。ここ数年は利益率の高い高価格帯の物件にも力を入れている。
エアビーアンドビーのサイトでは400万人のホスト(貸手)が700万件以上のリスティング(物件紹介)を行っている。同社は物件の保有や運営をしないため、巨額の投資が不要で身軽であるのが利点となっている。多様なホストと契約を結ぶことで、顧客の選択肢が広がる。ホテルに比べると、人件費などのコストを抑えられるのはもちろん、子供やペットにも対応しやすい。プライバシーにも留意している。また、料理が可能なキッチンや、バーベキュー施設やプールなどを備えた物件も多い。
一方、同社は宿泊施設を運営しないので、質の維持は個々のホスト次第となる。年に1~2回行く程度のバケーションでリスクを取るのは避けたいという人々にとっては、信頼性を持つホテルがベターだろう。結局、安定を取るか変化を取るかだが、ホテルによる画一的なサービスに飽き足らない人々のニーズは大きく、エアビーアンドビーはその需要を掘り起こすことで大きく伸びてきた。
大量解雇とIPO
コロナ禍で人々の行動が制限されたため、エアビーアンドビーのビジネスは甚大な影響を受けた。20年には45億ドル(約6300億円)の赤字を計上し、25%の従業員を解雇するまでに至った。しかし昨年からようやく各国の行動規制が緩和されてきたことでビジネスも復活してきた。予約件数を見ると、19年は2億7200万件、20年は1億9300万件、21年は3億件と回復している。今年はコロナ禍からのリベンジ需要を追い風にして、さらに拡大基調にある。
ただ、ゼロコロナ政策を続ける中国では宿泊レンタルのリスティングが完全に排除されている。筆者がエアビーアンドビーのサイトで中国を選ぼうとしたら「中国本土で予約可能な宿泊先はありません」と表示された。もともと中国国内は規制が強いため停滞しており、同社の世界全体の1%程度に過ぎなかったが、コロナがビジネスを阻んだ形だ。
エアビーアンドビーは20年に株式を上場した。公募価格は68ドルだったが、初日に倍以上の144.71ドルにまで上昇した。調達額35億ドル(約4900億円)のうち、2.38億ドル(約333億円)は物件のホストに割り当てた。コロナで厳しい状況におかれたホストに少しでも還元しようとしたもので、株価が大きく上がったこともあり、投資家の間で高く評価されている。
景気悪化で旅行減退
足元のビジネスは上昇気流に乗…
残り964文字(全文2264文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める