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個人旅行向け免税品販売で世界最大の中国中免 富岡浩司

海外企業_コロナ禍前の東京の免税品売り場(Bloomberg)
海外企業_コロナ禍前の東京の免税品売り場(Bloomberg)

中国中免(China Tourism Group Duty Free) 中国の免税品需要はコロナ禍でも好調/50

 中国中免は旅行に関わる免税品販売で世界最大で、特に富裕層や中間層の旅行客に対する免税品の販売が事業の中心になっている。中国で事業免許を持つ免税小売業者は9社あるが、同社は空港などの国境型店舗、市内店舗、クルーズ船内店舗など免税ビジネスの全事業免許を持つ唯一の中国企業である。2022年3月時点の免税販売店は世界で193店舗を展開。うち中国では28の省・直轄市・自治区に184店舗、香港に7店舗、マカオとカンボジアにクルーズ船内店舗も運営する。

離島や市内にも店舗

 設立は1984年と既に40年近い歴史があるが、中国の経済成長と海外旅行者の急増が追い風になり、近年になってから急激に成長。世界の旅行用免税小売業ランキングで10年は第19位だったが、20年には1位を獲得し、21年もその地位を堅持している。中国免税品市場におけるシェアは86%(21年)と群を抜く。上海証券取引所に09年10月に上場、香港証券取引所には22年8月25日に重複上場した。

 中国の免税品市場の潜在成長余地は非常に大きい。国内免税品市場は17年の299億元(約6000億円)から19年の501億元(約1兆円)に急成長したが、一方で19年に中国人海外旅行客が国外で購入した免税品総額は約7000億元(約14兆円)と見られている。つまり、中国人は海外で国内の14倍も購入している。

 同社が運営する免税店は多様だ。最も多いのが空港や国際鉄道の駅にある国境型店舗で、日本でもよく目にする国際空港の出国ゲートを入った側にあるものだ。ただ、中国では近年、帰国便を降りてから入国手続きをするまでのエリアにも大規模な免税コーナーが設置されているのが普通になってきた。とりわけ、中国で近年最も伸びているのは、観光地の海南島などの離島に設置された離島免税店である。国内旅行でも離島内の指定されたショップに行って、航空券など旅行手段の明細を提示すれば、免税品を購入することができる。日本でも同じようなシステムが沖縄に導入されている。

 そのほか、上海や北京など大都市に設置された市内免税店もある。これは海外に旅立つ前に免税品を購入、帰国後に海外購入扱いとして引き渡しを受けるというシステムだ。海外旅行者が国外で免税品購入に使うお金を、国内での売り上げにシフトさせることを目的として中国政府が編み出した。過去「爆買い」と呼ばれた膨大な消費資金の海外流出を国内に取り戻すのが狙いだ。

海外旅行再開に期待

 取り扱いブランドは既に1200件を超えており、ディオール、カルティエ、エルメス、プラダなど豊富な品ぞろえを持つ。こうしたトップブランドを取り扱うことで、集客効果を高め、それが更に新たな優良ブランドの出店を促す好循環につながっている。

 なお、商品別売り上げ構成は、化粧品類が34.4%、アパレル・アクセサリーが26.3%、酒・たばこ類が2.7%などとなっている(21年)。

 ゼロコロナ政策の足元での影響は大きい。3月末から6月まで続いた上海市の…

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