世界3位の韓国EC市場をけん引するクーパン 宮川淳子
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Coupang 米国上場の韓国版アマゾン/51
クーパンは小売り向けEコマース(電子商取引)と物流を行う韓国企業。2021年3月にニューヨーク証券取引所(NYSE)に新規株式公開(IPO)した。アプリやウェブサイトを通じて、アパレル、食料品、電子機器、レストランの注文や配達、旅行、コンテンツストリーミングなど幅広いサービスを低価格で提供している。
注文から24時間以内に配達する独自の配送サービス「Rocket Delivery」を使い、オンラインショッピングの待ち時間を減らすことに重点を置いた戦略で、21年12月期までの過去3年間の売上高成長率は平均66%の高い伸びだ。ただし、創業者でCEO(最高経営責任者)のキム・ボム氏がこれまで成長投資を最優先にしてきたことから、営業損益と純損益はまだ赤字である。IPOによって投資家層が広がったこともあり、今後はコスト削減にも取り組みながら、持続的な成長を目指していくとみられる。
韓国はEC世界3位
韓国の21年のGDP(国内総生産)は1・8兆ドル(約260兆円)と、日本の3分の1の規模だが、成長率は4%と高い(国際通貨基金〈IMF〉)。なかでも、小売り、食料品、フードサービス、旅行の総消費額は4830億ドル(約70兆円)で、GDP全体の3割弱に相当する。韓国ではEコマースの成長が目覚ましく、米国と中国に次いで世界第3位の市場規模だ。25年に向けて韓国のEコマース市場は年平均10%で成長すると調査会社ユーロモニター・インターナショナルは予測している。
クーパンの22年6月末のアクティブユーザー(過去1年間にサービスを利用した人)数は1年前に比べて5%増の1788万だった。単純計算では、韓国の人口の3人に1人が利用していることになる。10年にオンライン販売を開始してからさまざまな新しいサービスを追加し、ユーザー数を急激に増やしてきた。14年にRocket Deliveryを開始。19年からの月定額の会員制プログラム「Rocket Wow」では、最低利用金額なしで送料が無制限に無料になるサービスが加わり、その後も「Dawn」(夜12時までの注文で翌朝7時までに配送)などのオプションサービスを増やしている。Rocket Wowのユーザー数は、アクティブユーザーのほぼ半分を占めている。
新型コロナの影響もあり、21年1~12月期の売上高は前年比54%増の184億ドル(約2・7兆円)だった。
一方、売り上げ規模が営業費用を超える水準にまだ至っていないことに加え、物流倉庫の火事で2億ドル近い費用も発生し、同年の純損益は赤字だった。22年1~6月期も純損失は続いている。ただし、売上高が前年同期比17%増加したのに対し、営業費用の増加率を9%に抑制し、営業損失の規模は大幅に縮小している。
物価や金利が上昇する厳しい事業環境のなか、ユーザー数と利用額を増やし、Rocket Wowの会費値上げも行い、まずは営業損益の黒字化を目指すとみられる。クーパンは長期的な財務目標のひとつとして売上高に対する粗利益率27~32%を挙げている。現在の同比…
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週刊エコノミスト
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