中南米最大ECメルカドリブレ、フィンテック事業も展開 清水憲人
有料記事
MercadoLibre EC先進国市場を追う南米版アマゾン/52
スペイン語で「自由な市場」を意味する社名が示唆する通り、メルカドリブレは「ラテンアメリカの商取引と金融の民主化」を企業理念として掲げるEコマース事業者である。
創業は1999年。90年代後半は、インターネットの普及を背景に、欧米や日本などの先進国市場において、あまたの起業家がさまざまな新規事業を起こした時代であり、後に「ドットコム・バブル」と呼ばれることになる。しかしながらこの時期、ラテンアメリカをターゲットにする企業はほとんど現れなかった。なぜなら、通信インフラの整備や金融サービスの普及が遅れていたことから、インターネットを利用したビジネスを展開するのは難しいと考えられていたからだ。また、労働組合の力が強いことや、規制の透明性が低いこともビジネスリスクと捉えられていた。
そうしたなか、米国スタンフォード大学のMBA(経営学修士)課程に在籍していたマルコス・エデュアルド・ガルペリン氏が2人の学友とともに、母国アルゼンチンで始めたインターネットオークション会社がメルカドリブレである。サービス地域はその後すぐに、ブラジル、メキシコ、ウルグアイに拡大。翌年にはエクアドル、チリ、ベネズエラにも展開した。
2001年には、ネットオークション市場の巨人、米国のeBayとの提携を発表。eBayから19・5%の出資を受け入れ、eBayが買収したフランスのオークション企業iBazarのブラジル事業を譲り受けた。02年にはブラジル市場で競合するロカウ社も買収し同国でのプレゼンスを確かなものにした。04年にはペルー、06年には中央アメリカのドミニカ共和国、パナマ、コスタリカでもサービスを開始。先進国市場と同様に、ラテンアメリカでもインターネットビジネスが成立し得ることを証明していった。07年にはラテンアメリカの企業として初となる米国ナスダック市場への上場も果たしている。サービス提供地域は現在までに、ブラジル、アルゼンチンなど計18カ国に拡大。「ラテンアメリカ最大のEコマース事業者」に位置付けられている。売り上げ構成で最も大きいのがブラジルで21年度の全社売り上げの55・3%。以下、アルゼンチン21・7%、メキシコ16・6%、その他6・5%となっている。
後進市場の成長性
当初はオークションで価格を決定するサイトとしてスタートしたメルカドリブレだが、現在のビジネスモデルは米アマゾンに近い。
事業の軸となるのはEコマース用のマーケットプレイスの運営。小売事業者にウェブサイト上の場所を貸し出し、売り上げに応じた手数料を徴収する。出店者の代わりに配送業務を行う事業や、サイトの作成・維持を代行するサービスも提供している。もう一つ重要なのがフィンテック事業。欧米などと異なり、銀行口座やクレジットカードを保有していない利用者も多いラテンアメリカ市場では、オンラインで販売した際に支払い処理をどのように行うのかが大きな問題となる。そのためメルカドリブレは、それぞれの国情に合わせて、モバイル端末やQRコードを活用したさまざまな決済…
残り1036文字(全文2336文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める