フィリップス66 欧州での天然ガス不安を受けパイプライン事業強化 岩田太郎
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Phillips 66 高配当の米総合石油大手/53
フィリップス66は石油精製や天然ガス輸送パイプライン運営、ガソリンスタンドでの小売りなど、エネルギー産業の中流及び下流を手掛ける米国の総合石油企業だ。
2011年に米石油大手コノコフィリップスの当時の業績悪化による経営合理化の一環として分社化され独立した。コノコは1875年の創業、フィリップスは1917年に設立され、いずれも長い歴史を持ち米国で知名度が高い企業だ。フィリップス66の社名の由来はユニークで、米国の国道66号線での新作ガソリンの走行テスト時の記録が時速66マイル(106キロメートル)だったとされ、米国では道路標識のようなロゴになっている。21年12月期末現在、米国において7100カ所のガソリンスタンドを「フィリップス66」「コノコ」「76」のブランドの下に経営する。その他、約5000店のガソリン卸も運営している。
フィリップス66は高配当や自社株買いなど意欲的な株主還元も特徴だ。配当利回り(年間配当額を株価で割ったもの)は22年4~6月期に4.29%と、米優良銘柄指数S&P500平均の1.7%を上回る。
フィリップス66はロシアのウクライナ侵攻など地政学的な要因で化石燃料価格が高止まりする中で足元の収益が大幅に伸びている。1株当たり利益は21年12月期の5.7ドルから、22年12月期には16.1ドルへと3倍の成長を見込む。好業績の背景には製品需要の高まりを受けて各施設がフル稼働し、在庫が減少、利益率が上昇していることが挙げられる。また、精製部門では米東海岸・西海岸・メキシコ湾沿岸の南部や、英国、ドイツなどで原油などの原材料からガソリン、航空燃料などを作り、いずれも世界で引き合いが高い。
また、エネルギー企業への環境法制が全米で最も厳しいカリフォルニア州において8億5000万ドルを投じ、サンフランシスコ製油所を日産5万バレルの能力を持つ再生可能燃料の生産拠点に転換している。24年初頭に完成予定で、再生可能燃料の使用により、140万台相当のガソリン車を同州から取り除く計算になるとしている。
パイプライン会社を買収
フィリップス66の最近の投資で注目されるのは、エネルギー市場の持続的な需要拡大を見込んだ天然ガスだ。ウクライナでの紛争長期化でロシアから欧州向けの天然ガス供給に不安が生じていることで、米国産LNG(液化天然ガス)輸出の需要増大が予想されているためだ。パイプラインや輸送・精製・貯蔵施設の稼働率改善への投資を計画中だ。
すでに全米で大規模な天然ガスの輸送パイプラインを運営しているが、8月にコロラド州デンバーに本社を置くパイプライン運営会社DCPミッドストリーム・パートナーズへの買収案を発表した。
合成樹脂でも存在感が高い。出資比率が50%の子会社シェブロン・フィリップス・ケミカル(米テキサス州)では世界規模で石油化学製品、プラスチックなどを製造。特に、高性能高密度ポリエチレンの原材料として知られる1─ヘキセンは主に高分子改質剤や合成樹脂、また有機合成原料に使用され、需要増が続く。
投資6割、…
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週刊エコノミスト
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