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経済・企業 EV&電池 世界戦

欧州沸騰 EUが蓄電池版“エアバス構想”で民間支援 高塚一

 業界の盟主ドイツがEVシフトに本腰だ。雇用対策と蓄電池産業の育成を加速させている。

世界の蓄電池メーカー40社超が工場建設

 欧州では温室効果ガス(GHG)削減のため、政策的に電気自動車(EV)の導入を推進する動きが進んでいる。

 欧州連合(EU)はGHG削減目標(1990年比で55%削減)を達成するための政策パッケージを2021年7月に発表。新車(乗用車・バン)の二酸化炭素(CO₂)排出量を35年までに100%削減する改正案を提示した。22年6月にはEUの閣僚理事会(環境)が改正案を支持。欧州議会の最終審議は残るが、35年の100%削減は変わらない見込みだ。

独ショルツ政権が掲げた「1500万台」の衝撃

 この目標達成に向け、自動車業界の盟主ドイツで21年12月に発足したショルツ政権が、「30年までに最低1500万台のEV導入」を目標に掲げた。国内で登録されたEVは22年初に61万8460台、約9年間で25倍にするという野心的な目標となる。

 次世代自動車への需要喚起策として、独政府は16年から新車購入補助金制度を導入した。20年には政府負担分の補助額を倍増、その後、新車販売台数に占める次世代自動車のシェアは、1割未満から約4分の1にまで急増した。

 独政府は22年7月、補助金が一定の役割を終えたとみて、その縮小を公表した。具体的には、プラグインハイブリッド車(PHV)向け補助は22年末で終了、EV向けも補助額を減らし、補助条件も厳しくするほか補助予算総額に上限を設ける。

 一方で、急速にクルマの電動化が進むと、ガソリン車など“内燃機関”関連部品などを製造してきた企業のビジネスや雇用への影響も懸念される。

 ドイツでは、乗用車の電動化で「欧州で40年までに、主として内燃機関搭載車などに使われる部品関連で約58万人の雇用が消失」「25年までに少なくとも17万8000人、30年までに少なくとも21万5000人の雇用に影響」などの研究結果が発表されている。

 独政府としても企業を支援し雇用を守る姿勢を鮮明にしている。ショルツ政権は、特に地方の中小企業を支援するほか、「自動車産業構造転換プラットフォーム」を設け、関係者が議論する機会を提供する。また、前メルケル政権は、総額20億ユーロ(約2700億円)で、自動車産業、特に地方の中小企業を支援する「未来投資プログラム」を21年から実施した。

蓄電池は「日本の10倍」

 欧州で次世代自動車の導入が進むと、自動車産業の構造・サプライチェーンが大きく変わるといわれる。特に、付加価値の4割を占めるとされる蓄電池への需要が急速に伸びる。国際エネルギー機関(IEA)によると、欧州における電動車用蓄電池需要は25年に最大200ギガワット時(GWh)まで拡大、30年には400~800GWhまで伸びると予測する。

 また、欧州最大の応用研究機関であるフラウンホーファー研究所は、欧州における蓄電池セルの生産能力(定置用も含む)が25年までに最大600GWh、30年までに1500GWhまで拡大すると見る。30年までに欧州が全世界の蓄電池生産能力の約4分の1を占めることになるという。この能力は日本の30年の官民目標(国内150GWh、世界600GWh)の10倍の規模だ。

 同研究所によると、これまでに40を超える蓄電池セルメーカーが、欧州での蓄電池工場建設を発表している。中国のCATL(寧徳時代新能源科技)、SVOLT(蜂巣能源科技)、韓国のLG化学、スウェーデンのノースボルトなど欧州地場メーカー、独フォルクスワーゲン(VW)などの完成車メーカーが、今後の需要を見越して欧州に蓄電池工場を建設・操業している(冒頭掲載の図参照)。

 独政府にとっても、蓄電池の研究開発・生産などのサプライチェーンを、ドイツ国内や欧州域内に残すことが産業力維持や雇用確保の観点…

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